2023年は円安も追い風となり、日経平均株価がバブル崩壊以降で最高値を記録する1年となった。果たして、2024年もこの勢いは持続するのか。それとも――。“経済のプロ”が徹底取材と独自の視点で解き明かす!
(1)難題はETF どうする日銀
2024年の日本経済において、最大の焦点となるのが日銀の出口戦略だ。
12月19日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めた日銀。その一方で、植田和男総裁は「(経済の好循環が実現する)確度は引き続き少しずつ高まってきている」と述べるなど、緩和解除が近いことも匂わせていた。
だが、そこには難題がある。営々と買い続けてきたETF(上場投資信託)の存在だ。ETFの買い入れは、主要中央銀行では日銀しか行っていない“奇策”。日銀の23年4〜9月期決算によると、日銀が保有するETFは9月末時点(時価ベース)で60兆6955億円まで膨張している。
しかし、残高が増えるにつれ、その出口戦略は難しくなる。「最大の保有者である日銀が売りに出せば、それだけで価格が下落し、日銀は損失を抱えるというジレンマに直面する」(市場関係者)ためだ。特に国債のように満期がない株式は、どこかの局面で売るという行為が必要になる。
一体、どうするのか。
浮上しているのが、ETFを個人に直接譲渡して保有してもらう構想だ。提案者は、元日銀理事で、ETF買い入れを決めた当時の企画局長、櫛田誠希氏。まず個人の購入希望者を募り、日銀が保有するETFを割引価格で譲渡する。譲渡後は一定期間保有を義務付けるというスキームだ。日銀が保有するETFは株価上昇で含み益があり、相応の割引価格でも日銀に損失は生じない。かつ、売却制限を課すことで市場インパクトも減殺できる。
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source : 週刊文春 2024年1月4日・11日号