民主化の女神が「亡命」を公表。だが、中国は近年、世界各国で反体制活動家への攻撃を強めている。彼女を待ち受けるものとは――。『戦狼中国の対日工作』で“秘密警察”の実態を暴いた気鋭のライターによる徹底ルポ。
12月14日、香港警察は香港国家安全維持法(国安法)違反の指名手配リストに、著名な民主活動家の鄭文傑ら5人を新たに追加し、情報提供に100万香港ドル(約1800万円)の懸賞金を出すと呼びかけた。
彼らに続いて指名手配の可能性が浮上しているのが、日本で知名度が高い女性活動家の周庭(アグネス・チョウ)だ。
彼女は2020年6月に国安法が施行されてから複数回逮捕され、同年末から約7カ月間にわたり服役。出所後も香港でなかば自宅軟禁下にあった。だが、23年12月初頭に約2年半ぶりにインスタグラムを更新。カナダへ事実上の亡命を果たしたことを明らかにした。
周庭は14年に香港で起きた大規模な学生運動「雨傘運動」の中心組織のひとつ「学民思潮」の広報担当者を務め、流暢な日本語と可憐な容姿が日本国内で話題を呼んだ。2年後、学民思潮の中心メンバーとともに、香港自決派(香港の自治徹底を求める穏健派)の政党「香港衆志」を結成して初代副事務局長に就任した。だが、20年に国安法が施行されると、香港衆志は解散を表明して代表者も英国に亡命する。香港に残った周庭は、警察側から複数回の処罰を受け、政治活動はもちろんSNSでの情報発信も自粛せざるを得なくなった。
なお誤解されがちだが、当時の周庭は民主化運動の中心人物ではなく、議員数1名の政党の幹部の一人にすぎなかった(現地でも「日本で人気の活動家」という位置づけだ)。そのため、他国における彼女の知名度や影響力は限定的だ。
だが、今回の亡命劇は世界のメディアからも注目を浴びた。理由は彼女がインスタグラムの投稿のなかで、香港で監視下に置かれていたときの状況や、出国前に当局者から受けた仕打ちを詳細に暴露したためだ。
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source : 週刊文春 2024年1月4日・11日号