韓国の旧正月連休は2月9日から12日だったが、今年の話題の中心は尹錫悦大統領の妻、金建希女史だった。ソウルの知人はこんな小話を聞いたという。

「大統領警護室は最近、大統領の顔に傷がつかないか懸念を募らせている。金女史が、大統領に物を投げつけないか心配だから」

 背景には昨年11月、韓国のユーチューブチャンネル「ソウルの声」が公開した隠し撮り映像がある。22年9月に、在米韓国人牧師が撮影したというもの。

 黒縁のメガネをかけ、白いTシャツ姿の金女史が「アウー」と嬉しそうな声を上げる。「こんなことをしないで。本当にしないでください」。女史の目の前のテーブルにはブランド品の包みが置いてあった。

 ブランド品について牧師はメディアに、「ソウルの声」側が300万ウォン(約34万円)で購入したクリスチャン・ディオールのポーチを「プレゼントした」と明らかにした。ポーチは女史のもとにあるため、野党は、法律違反(公職者の配偶者が高額な金品を受け取ることは禁じられている)の疑いがあると糾弾をはじめた。

経歴が虚偽であったことも話題の金女史

 大統領周辺は火消しに躍起になっているが、ソウルの外交筋は「ファースト・レディーらしからぬ振る舞いがみられるのも事実」と語る。金女史は派手な服装を好み、言葉遣いも上品とは言いがたい。昨年12月の外遊に同行した際、犬好きの女史はアムステルダムで動物保護団体に「犬の食用禁止は大統領の公約だ」と勝手に説明したこともあった。そのため、韓国大統領室は、一度は廃止した大統領配偶者を担当する第二付属室の復活を検討し始めている。「金女史のコントロールが必要」(前出・外交筋)との判断とみられる。

 問題は「金女史に弱みを握られている?」という噂が政界で流れるほどの尹大統領の弱腰ぶりだ。2月7日のテレビ番組でも「(妻が)はっきり断れなかったことはやや問題と言えば問題だ。少し残念だった」と語ったが、謝罪はしなかった。逆に「(隠し撮りは)政治工作だ」と批判した。

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source : 週刊文春 2024年2月22日号