産業用ロボットメーカーのファナックが東京国税局の税務調査を受け、2021年3月期までの3年間で約97億円の申告漏れを指摘された。追徴課税は過少申告加算税を含めて約22億円に上るとされる。
「ファナックは、台湾の子会社にロボットや機械部品を安い価格で販売。所得を子会社に移すことで、本来日本国内で計上すべき利益を少なくさせた疑いです。これに対し、同社は『当局と見解の相違がある』としています」(国税関係者)
ファナックは「謎の最強企業」と称されるエクセレントカンパニー。一般消費者には馴染みは薄いが、工作機械用CNC(コンピューター数値制御)などで世界トップのシェアを有する。無借金でキャッシュリッチ企業の代表格だ。全従業員の約3分の1を研究員が占め、競争力も高い。
「東京帝大第二工学部卒の稲葉清右衛門氏(2020年没)が1956年に富士通の社内事業としてNC(数値制御)へ参入したのが始まりで、72年にNC事業を分離する形で『富士通ファナック』を設立。その後、富士通との資本関係は解消しています」(銀行関係者)
「謎」と言われる所以の一つが、山梨県南都留郡忍野村に構える本社の存在だ。富士山麓の広大な敷地に本社機能のほか、研究所などを集約。しかも、工場の外壁から商品のロボット、社員の制服に至るまで全て黄色で統一されている。
「富士通はかつて事業ごとに色分けしており、NC事業部は黄色でした。清右衛門氏は『戦いの色』と位置付け、社内を黄色に染めていったのです」(同前)
03年に清右衛門氏の長男、善治氏(75)が社長に就任。ただ、自身は00年に名誉会長に退く一方、経営本部長の要職には留まり続けた。
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source : 週刊文春 2024年4月4日号