東京都のほぼ中央にある府中市。この地の名物と言えば、何といっても毎年ゴールデンウィークに大國魂神社で行われる例大祭くらやみ祭だ。とくに5月5日夜の神輿渡御は祭りのクライマックス。小さな街が期間中、毎年80万人もの人出で賑わう。くらやみ祭の名のとおり、この日の夜には、御本社と御霊宮の2基の神輿のほか、旧武蔵国(現在の東京都と埼玉県と神奈川県の一部)の6ヶ所の神社の祭神を祀る六基の神輿が街のなかを豪壮に練り渡る。
“民俗学の父”柳田国男によれば、古くは貴いカミが神輿に乗って渡御するさまは、ヒトが見てはならぬものと考えられ、そのため本来、祭りはひとめを避けて深夜に行うべきとされていた。しかし、いつしか祭りはヒトに見物されるものに変わってゆき、今では当たり前のように日中に行われるものとなっている。そんななか、その名のとおり夜の闇の中で行われる府中のくらやみ祭は、祭り本来の古式に則った非常に珍しいものとされる。
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source : 週刊文春 2024年5月2日・9日号