史上初の外国出身横綱だった曙が逝った。長身巨躯を生かしたスケールの大きな取り口で土俵を沸かせた名力士には、最大のライバルがいた。後世、曙貴時代と呼ばれる大相撲が最も熱かったあの頃を、貴乃花が振り返る。
貴乃花光司氏(51・以下、貴乃花)が回想する。
「同期の彼と初めて対戦した時、いきなりもろ手で吹っ飛ばされてしまって。まだ体ができていないとはいえ、私は入門前から相撲をやっていたのに、向こうは相撲未経験。とてつもない素質を持った人たちが集まっている世界なんだな、俺って弱いんだなと、思い知りました。ありがたいことに。私の相撲人生はあそこから始まった気がします」
序ノ口として、初めて番付表に「貴花田」の四股名が載った1988年5月場所。当時15歳の貴乃花がプロ初黒星を喫した相手こそ、後に第64代横綱となる同期入門の曙太郎氏(以下、曙)だった。
その曙が心不全でこの世を去った。享年54。早すぎる訃報が伝えられたのは4月11日のことだ。貴乃花は所属事務所を通じて哀悼の意を示し、〈百折不撓の人生観だったと思いますが、これからは身を楽にして安らかに〉と偲んだ。
後日、貴乃花は小誌の取材に応じると、2時間にわたり、歴戦の友への思いを打ち明けた。
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source : 週刊文春 2024年5月2日・9日号