つくづく思うのですが、テレビのワイドショーってのは不思議です。テレビドラマやアニメにはそれぞれ熱心なファンがいますが、各局のワイドショーを毎日録画してでも見るという熱心なワイドショーファンや、ワイドショーの魅力を熱く語る人には、いまだにお目にかかったことがありません。
たまに病院の待合室で診察の順番を待つ間、テレビに映るワイドショーを眺めるのですが、知的な興味をまったくそそられません。まあ、診察の順番が来たことに気づかないほどのめりこまれても困るから、退屈なワイドショーが待合室向きなんですかね。
そういえば昔はワイドショーに名物コーナーがありました。「ドキュメント女ののど自慢」、「突撃!隣の晩ごはん」、「ああ日本の社長」なんてコーナータイトルを聞くだけで、中高年のみなさんは、懐かしさに顔をほころばせるでしょう。
家出人捜しもワイドショーの定番企画でした。突然蒸発してしまった夫や妻などを捜す家族が、帰ってきてくれ、連絡をくれと、涙ながらに訴える姿を放送すると、全国の視聴者から目撃情報が寄せられて、家出人が見つかることもけっこうあったというから、テレビの力ってすさまじい。
変わりダネとしては、初期の『小川宏ショー』でやっていた「こどもの広場」。小5から中2くらいのひとクラス全員をスタジオに呼んで、さまざまな社会的テーマについて意見を交わす企画です。なぜ学校に行くのか、男らしさ・女らしさ、君が代と小学生など、ビックリするくらい攻めたテーマが多かったんです。
私はそれを生で見たわけじゃありません。生まれる前の話ですから。なぜ知ってるかというと本で読んだからです。「こどもの広場」だけでなく「女ののど自慢」も「隣の晩ごはん」も「日本の社長」も、ワイドショーの名物コーナーはたいてい書籍化されてます。
昔のワイドショーには、本にしても売れ行きが見込めるくらいの秀逸な企画がいくつもありました。ワイドショーを見てない人でもそういうコーナーの存在くらいは知ってましたし、30年以上経ったいまでも懐かしく思い出せるほどインパクトがあったんです。
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source : 週刊文春 2024年5月23日号