タイにあるメークロン鉄道市場をご存じだろうか。テレビ番組の海外ロケなどでたびたび採り上げられてきた、世界的に有名な“びっくりスポット”だ。普段は雑踏で賑わう活気ある市場なのだが、実はそこは線路の上に勝手に作られたもの。電車が通る定刻になると、商人たちは素早くテントや商品棚を仕舞い込み、客たちもサーッと道の真ん中を空けて、そこを電車が通り抜ける。で、電車が過ぎ去ると、再び人々が戻ってきて市場が再開される。見ているほうがハラハラするが、商機を逃さぬ人々の逞しさに触れられるタイの名物観光地となっているそうだ。
そうした図太くも逞しいエネルギーは、我が室町人にも共通する。たとえば、鎌倉〜室町時代の京都には、「巷所」と呼ばれる、公道を不法占拠した土地があちこちに見られた。そこでは、庶民たちによって旧平安京の公道が勝手に耕され、稲や麦、藺草などの栽培に充てられていた。
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source : 週刊文春 2024年6月27日号