思い出深い能登の震災に心を痛められた彬子さま。特に輪島漆器の伝統継承に危機感を覚え、自ら先頭に立ち異例のクラウドファンディングを始められた(詳細はこちら)。「宮内庁とも調整せずに決めた」というご決断の裏には、祖母・百合子さまの“漆のパズル”や、父・寛仁さまの哲学があった。名字も住民票もない日常の苦労、留学記が版を重ねた喜び、明石家さんまの“教え”……話題は多岐に及んだ。女性皇族の今後をめぐる議論についてもお尋ねすると――。
輪島の棚田の景色を、はっきりと覚えています。2013年頃でしたでしょうか、輪島市白米町の「白米千枚田」を訪れたときのことです。夕暮れ時に行かせて頂いたのですが、暮れなずむ景色の中、棚田にキラキラと夕日が当たっていた光景は、いまだに忘れられません。その後、すっかり陽が沈んだ後に棚田がライトアップされ、稲で緑色だった田んぼに明かりがついて、がらりと違う景色になったのも印象的でした。
輪島の朝市も歩きました。地元のおばちゃま方が色んなものを売っておられて、話しかけると「これはどういうもので、こういう風に食べたらいい」などと説明してくださる。一部、言葉が聞き取れなかったりもするのですけれど、そういう交流ができたことが、思い出として温かく心に残っています。
ですから、今回の震災でその場所が燃えてしまった映像を見るのが、一番つらいことでした。被災地のお話はもちろん伺いますし、ニュースも目にするのですけれど、いまだに映像がちゃんと見られません。
小誌の取材にこう語られるのは、三笠宮家の彬子女王(42)だ。彬子さまはご自身が発起人代表となり、能登の漆芸を支援するためのクラウドファンディングの立ち上げを表明された。支援金の募集は6月19日にスタートした。
能登を代表する伝統工芸であり、国の重要無形文化財にも指定されている輪島塗。124もの工程があり、完成までに半年から数年かかる。そんな輪島塗の工房の多くは元日の大地震で甚大な被害を受けた。
彬子さまが先頭に立って集まった資金は、こうした被害に遭った職人が漆器制作を再開するための支援にあてられる。だが、皇族が先頭に立って資金集めを行うのは異例のこと。小誌は今回、その思いを伺うべく取材を申し入れた。彬子さまはオフホワイトのジャケットにスカート、胸には漆のブローチ。三笠宮東邸の応接間で、約1時間半にわたって被災地への思いを語られた。
廃業される漆の職人さんが大勢いらっしゃるのではないか――。今回の震災で、特に心配していることです。漆芸に必要な道具は、特殊なものが多い。40代や50代の職人さんならまだしも、60代や70代の高齢の職人さんで後継者もいらっしゃらなくて、工房も被災し、特殊な道具も一から揃えないといけない状況になった時に、「もう1回やってみようか」と思う方って、ごくわずかなんじゃないのかなって。
職人さんたちが仕事を続けていくために何かできることがないか。そう考え、職人さんを支援するクラウドファンディングを行うことにしたのです。
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source : 週刊文春 2024年6月27日号