「戻したいね! それが慶応OBの本音ですよ」

 

 そう語気を強めるのは、幼稚舎から慶応で学び、大学時代は応援指導部に所属した生粋の“慶応ボーイ”長島昭久衆議院議員である。

 20年ぶりの新紙幣発行に列島が沸いている。やれ数字のデザインに難ありだとか、やれ自販機の更新を迫られて民間への負担が大きいとか、デメリットを強調する向きも含め、誰もがどこか上気している。

 ところが、このお祭り騒ぎから距離を置く一団があるという。渋沢栄一の刷り込まれた新1万円札を苦々しく眺めるのが、慶応関係者が組織する「三田会」だ。

 

「三田会は卒業生同士のつながりと愛校精神が強い。去年、夏の甲子園で優勝した慶応高校の大人げない応援は顰蹙を買ったほど。新紙幣のデザインが発表された2019年当時から、三田会の一部では『福沢諭吉先生から変えないで』と反対の声が上がったそうです」(慶応大学関係者)

 振り返れば紙幣の刷新は何もこれが初めてではない。新渡戸稲造(5000円札)、夏目漱石(1000円札)がお役御免となり、それぞれ樋口一葉と野口英世にデザインが変わったのは20年前。このリストラの波をかいくぐり、都合40年間、最高額紙幣の顔に居座ってきたのが福沢諭吉だ。前回のデザイン一新の際、時の首相は小泉純一郎氏、財相は故・塩川正十郎氏だった。ともに慶応大学OBゆえ福沢留任に強くこだわったと、まことしやかに囁かれてきた。

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source : 週刊文春 2024年7月18日号