「鹿児島の特攻資料館に行って生きていることを、そして卓球を当たり前にできることが当たり前じゃないっていうのを感じたい」
終戦の日を2日後に控えた8月13日、帰国会見でこう語ったのは、パリ五輪女子卓球で2つのメダルを獲得した早田ひな(24)だ。
専門誌記者の解説。
「混合ダブルスでは初戦敗退を喫したものの、シングルスでは、順調に準決勝まで勝ち上がりました。ところが中国のエース孫穎莎との対戦を前に、左前腕部の負傷が発覚した。コンディションは最悪でしたが、3位決定戦への出場を志願。痛み止めの注射を打って韓国選手に勝利し、銅メダルを獲得したのです」
続く女子団体では、決勝で中国に敗れたものの、銀メダルの獲得に大きく貢献。早田が4歳から通った卓球教室の恩師・石田千栄子さんが振り返る。
「左腕を怪我して苦しい場面もありましたが、テーピングで手首が固定されたことで、むしろフォアドライブは安定して決まっていた。まさに怪我の功名です。特にひなのフォアドライブは回転数が多く、背が高い彼女が打つと、上から鋭く突き刺さって中国のトップ選手でも返すのは難しい。パリ五輪の試練で、理想の戦い方を見つけてくれたのではないでしょうか」
こうして手にした2つのメダルを首にかけ、臨んだのが、冒頭の帰国会見だった。「帰国後に行きたい場所」として、アンパンマンこどもミュージアムに加え、鹿児島県にある知覧特攻平和会館を挙げたのだが、
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source : 週刊文春 2024年8月29日号