現在、「乞食」という言葉は、放送禁止用語なのだそうだ。では、放送では何と言い換えれば良いのか? 言い換え語としては「ホームレス」があるらしいが、それは少し意味が違うだろう。「乞食」の本質には、他者に施しを乞う、物乞いがある。それに対し「ホームレス」は、文字通り「無宿人」という意味だ。
そもそも現代日本では、他者の哀れみを誘って金品を求める乞食行為は軽犯罪法で禁止されていて、法律上、乞食は存在してはいけない存在となっている。言われてみれば、街中でホームレスは見かけても、乞食をしている人はほとんど見かけない。実際に身のまわりにいないのだから、日本の放送局が乞食とホームレスの区別がつけられないのも仕方ないのかも知れない。ただ、この現代日本の乞食に対する無理解は、世界的にも歴史的にもかなり特異なものだ。
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source : 週刊文春 2024年9月26日号