10年ほど前、読売新聞で新刊本の書評を執筆する読書委員という仕事をしていたことがある。理系・文系問わず様々な分野の学者や作家の方々20人ほどが隔週で読売新聞社の会議室に集まり、直近に出版された大量の本のなかから、これぞという本を選んで書評を書くのだ。会議では、各自が採り上げる予定の本をみんなの前で紹介する。

 当時のメンバーのなかには本誌連載でもお馴染みの朝井リョウさんや稲泉連さんや出口治明さんなどもいて、多士済々。会議の席では、それぞれが自分の選んだ専門分野の本の魅力について熱く語る。そうした話を聴いているだけでも自分の世界が広がるようで、毎回、会議に出るのが楽しみだった。何人かの方々とは任期終了後も一緒に旅行に出かけたり、今でも親しくお付き合いさせてもらっている。

 その会議の場で、印象に残っている体験が一つある。いつも僕は若手の某人気作家さんの隣に座っていたのだが、会議を重ねてだんだん彼とも親しくなってきた頃、休憩時間に、その彼から申し訳なさそうに次のような質問をうけた。

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source : 週刊文春 2024年10月3日号