レバノンは悲しい国です。南隣のイスラエルがレバノン南部に地上侵攻したり、首都ベイルートを空爆したりしているのに、国家として何もできないのですから。
朝日新聞によると、レバノンのミカティ暫定首相は、人口530万人の同国で、全土での避難民が約120万人にのぼると明らかにしたそうです。イスラエルによる侵攻や空爆は、明らかに侵略行為。レバノン政府としては自国の領土を守るためにイスラエル軍に反撃したいところなのでしょうが、レバノン政府軍には、そんな力はありません。
レバノン政府軍は一応イスラエルとの国境に警備兵を配置していたのですが、イスラエルがレバノン南部の住民に退避を呼び掛けたところ、政府軍兵士もさっさと退避してしまったといいます。
では、そもそもレバノンとはどんな国なのか。元日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告が2019年12月に日本を密出国してレバノンに入国したというニュースで、レバノンについて初めて知ったという人もいることでしょう。ゴーン被告は、いま何を考えているのか。「日本にいた方がよかった」なんて後悔していないでしょうか。
レバノンの国旗にはレバノン杉が大きく描かれています。良質な木材として知られ、レバノンの人たちの誇りです。ただ、いまはレバノン杉が激減し、保護活動が行われています。かつてこの地域には大量にあったようですが、紀元前10世紀までにフェニキア人が大量に伐採してしまったといわれています。フェニキア人といえば、地中海を縦横に行き来して貿易で栄えました。行き来するための船を建造するために使われたのです。
レバノンの国名の由来は、かつてのフェニキア語で「白い」という意味の言葉です。レバノン中央部のレバノン山脈は冬場冠雪するため、こう呼ばれたのです。
レバノンの東部は険しい山岳地帯。西アジアで迫害を受けた宗教の少数派が逃げ込みました。その結果、キリスト教マロン派(マロン典礼カトリック教会)やイスラム教ドゥルーズ派など、なんと18もの宗派があって、「モザイク国家」と呼ばれています。
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source : 週刊文春 2024年10月17日号