10月24日、「FUNAI」ブランドのテレビなどを製造する船井電機(大阪府大東市)が、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は約461億円(今年3月末時点)。同日、従業員約2000人に対し、解雇になる旨が伝えられたという。
「船井電機は創立60年超の老舗企業。1997年から米ウォルマートとの取引を開始し、北米市場では低価格帯のテレビなどで高いシェアを誇りました。一時は『ソニーより強い』と言われたほどです。米フォーブス誌によれば、創業者・船井哲良氏の資産は約2700億円(2005年のレート)に及びました。ただ、10年代以降、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、経営が低迷していきます」(経済部記者)
17年には哲良氏が90歳で死去。その後、出版会社「秀和システム」(上田智一社長)グループの傘下に入り、21年に非上場化。上田氏が社長に就任した。
「更なる躓きはここからです。業績が悪化していたテレビ事業からの脱却を掲げ、昨年4月、脱毛サロン『ミュゼ』を展開するミュゼプラチナムを買収。美容事業を新たな柱に据えた。ところが、ミュゼはネット広告会社に対して約22億円の負債を抱えており、船井電機は連帯保証をしていたのです。この債務の返済が進まず、ネット広告会社が東京地裁に対し、船井電機株の仮差し押さえを申し立てていました」(大手信用情報機関)
ミュゼ買収後、人事も混乱した。今年3月から4月にかけて取締役3人が途中辞任。昨年6月に鳴り物入りで会長に招聘されたパナソニック出身の柴田雅久氏も代表権が外れた。そして、上田氏も9月末に突如として社長を辞任したのだ。
「役員らが入れ替わる過程で、船井電機の資産が外部に流出していた可能性も指摘されています」(同前)
結局、10月3日までに経営体制を刷新。新社長に元財務省理財局次長の上野善晴氏(65)、代表取締役会長には元環境相の原田義昭氏(80)が就任。そんな彼らが今回、選んだのが、取締役の申立てによる異例の「準自己破産」だった。
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source : 週刊文春 2024年11月7日号