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連載池上さんに聞いてみた。

池上彰氏が解説「ルノー社がフランスを裏切った過去と、政府が大株主である理由」

池上さんに聞いてみた。

2018/12/17

Q フランス経済相、なぜあれこれルノーのことに口出しするの?

 11月、日産の前会長カルロス・ゴーン氏が逮捕されました。日産とルノーの関係がどうなるかと思っていたら、フランスのルメール経済・財務相が、トップの人選にまで口出ししているのを見て驚きました。そもそも、どういう経緯でフランス政府がルノーの筆頭株主になったのでしょうか?(10代・男性・学生)

A ルノー社が、かつてフランスを裏切るような事態になったことがあるからです。

 それは、ルノー社が、かつてフランスを裏切るような事態になったことがあるからです。

 フランスのルノー社は1899年、ルノー家の3兄弟によって設立されました。その発展ぶりは目覚ましく、パリ市内のタクシーを大量受注します。これが第一次世界大戦で大活躍。ルノー社製タクシー1200台が、フランス兵の輸送を引き受けたのです。

 その後、ルノー社の生産は拡大。通常の自動車ばかりでなく、戦車や航空機まで製造します。フランス軍にとって、ルノー社はなくてはならない存在になります。

 ルノー社製の戦車など想像できますか? パリの軍事博物館にはルノー社製の戦車が展示してありますよ。

©iStock.com

 しかし、第二次世界大戦でドイツ軍の侵略を受けてフランスが降伏すると、ルノー社はドイツ軍の命令でドイツ軍のための軍事工場になります。これは、フランスにとって裏切り行為でした。

 その結果、第二次大戦後、ルノー社の資産は国によって没収されます。自由フランス軍の英雄ド・ゴール将軍は、ルノー社がフランスを裏切ることのないように、1945年、行政命令でルノーを国有化。「ルノー公団」になります。

 その後、経営の効率化を目指して1996年には民営化されますが、いまもフランス政府が大株主となっています。

 大株主である以上、ルノーの経営に口を出す、というわけです。提携関係にある日産がもたらす利益がルノーには貴重です。マクロン大統領の支持率が下がっているいま、フランスを代表する自動車会社ルノーの利益を守ることはマクロン政権にとって譲れないことなのです。

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