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藤井聡太七段が朝日杯2連覇の快挙 今後、期待がかかる記録更新は?

藤井聡太七段が朝日杯2連覇の快挙 今後、期待がかかる記録更新は?

16歳6ヵ月での棋戦連覇は、羽生九段を大幅に上回る年少記録だった

2019/02/16
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順位戦の連続昇級は「他力」となったが……

 藤井は、2月5日の順位戦C級1組の近藤誠也六段戦に敗れたことで、デビュー以来の順位戦連勝が歴代タイの18で止まってしまった。B級2組への昇級も他力(自身の勝ちだけでなく、競争相手の敗戦も求められる)となったが、3月5日の最終局で「棚から牡丹餅」が転がり込んでくると、順位戦の連続昇級となる。

©志水隆/文藝春秋

 C級2組からスタートして、C級1組(現在の藤井の地位)→B級2組→B級1組→A級というのが順位戦の昇級ルートだ。各クラスで1年間戦われるリーグ戦で上位2名(C級2組は3名)に入った棋士が、上のクラスに昇級する。またA級優勝者は名人への挑戦権を得る。

 順位戦には飛び級制度がない。だからどれほど速くとも、デビューから名人挑戦権を得るまで最短で5年かかるのだ。過去にデビューから最速で名人を獲得したのは、中原と谷川の2人で、デビューから6年での快挙だった。

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 中原はデビューからノンストップでA級まで駆け上がり、A級の2期目に名人挑戦権を獲得。当時13連覇中だった大山を破り、24歳で名人を獲得する。その偉業から「棋界の太陽」と呼ばれた。

 谷川はデビュー年にC級2組で1期足止めを食ったが、その後はA級まで突っ走った。A級1期目でも中原とのプレーオフを制して加藤名人(当時)への挑戦権を獲得し、奪取。21歳の名人獲得は史上最年少記録である。

大盤解説で会場を訪れていた佐藤天彦名人とのツーショット。昨年の大会では、両者が対局して、藤井が金星を挙げていた ©志水隆/文藝春秋

藤井が最速で名人を獲得するとしたら

 昔は順位戦のクラスが棋士の格及び収入に直結していたので、他棋戦以上に力を入れる棋士が多かったという。「A級八段」というのは一流を示すステータスであった。

 そのA級に最速で登ったのが加藤である。14歳のデビューからノンストップでA級へ昇級。18歳のA級八段は「神武以来の天才」と呼ばれた。A級の1年目は平凡な成績だったが、2年目に挑戦権を獲得し、20歳で大山名人に挑戦。当時の大山の壁は厚く、その後幾度となく跳ね返されたが、42歳のとき、ついに悲願の名人位についた。

 藤井が最速で名人を獲得するとしたら、2022年の5~6月となる。19歳名人が実現すれば、これこそ不滅となる記録だろう。

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