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「日本を離れて『日本』が大好きになった」13年前にイチローが語った日の丸への思い

イチロー独占インタビュー

2019/03/26
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――日本人には姿勢のいい、背筋の伸びた国民性を誇る文化があると思いますが、そういう部分が野球の中でも示せるということですか?それは勝つことによって示されるのでしょうか?

イチロー いや勝つことによってではなく、負ける中でも示せることですから。当然、勝ったチームはそれをしなくちゃならないですけど。それでは今回、(アジア予選や二次リーグの)それぞれの試合で勝ったチーム、優勝はしなかったけど、その勝ってたチームがそれを示したかというと、ボクはそうではなかったと思うんです。

©文藝春秋

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 大会直前にイチローが「向こう30年は日本に手は出せないな、という感じで勝ちたい」と発言したことに、韓国サイドが猛反発。これを機に大会では韓国のファンばかりか韓国チームも巻き込んだ猛烈なイチロー・バッシングが行なわれた。このイチロー・バッシングが、もともとスポーツの世界で日本に比べると、ナショナリズムの色合いが一層濃く出る傾向にある韓国に火をつけた感もある。

 二次リーグが行われたロサンゼルス近郊にあるアナハイムのエンジェル・スタジアムには、ロス近辺から大挙して韓国の応援団が集まりスタンドを埋め尽くした。スタンドには「独島(竹島の韓国名)」とハングルで書かれたプラカードが林立するなど、領土問題まで持ち出され、猛烈な対抗意識がむき出しになった。

 二次リーグの日本対韓国戦では、試合後に勝った韓国ナインが、マウンドに韓国の太極旗を立てるパフォーマンスを行ない、球場関係者の顰蹙を買う場面もあったほどだった。一部ではマウンドを竹島に見立てたという説もあり、単なる野球の試合ではなく、国と国の対決というナショナリスティックなぶつかり合いが大きくクローズアップされた。

二次リーグの日本対韓国戦 ©文藝春秋

 この韓国の行為に対し、日本チームは準決勝で勝った試合後に、上原浩治(読売ジャイアンツ)、清水直行(千葉ロッテ・マリーンズ)両投手が日の丸をマウンドの上に広げて置く、というパフォーマンスで返している。

――韓国が日本戦で勝ったときに、マウンドの上に太極旗を立てましたよね。それについてどう感じましたか?

イチロー ありますよ。ありますけど、ボクはそれはメディアには言わない。

――逆にその後、日本が勝ったときに、日の丸をマウンドの上に置いたことについてはどうですか?

イチロー それもありますけど、ボクはメディアにはそれも言わない。

――スタンドで日の丸が振られるのを見て感じることはありますか?

イチロー それは感じますけど、ボクらはここ(袖)に日の丸をつけていること、たとえスタンドにそれがなかったとしても日の丸について、やっぱりボクらは重いものを感じていたと思いますね、ここについていたことで。その数がどうとかは関係ないですよね。

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――スパイクに日の丸をつけたのは、いつ頃決めたんですか?

イチロー 出場を決めたときですよ。

――なぜつけようと思ったんですか?

イチロー 特別感が欲しかったというのがあるでしょうね。ま、そんな深い理由はないですよ。

――やっぱり袖口とかはあまり見えないじゃないですか。足元見たときに日の丸がよく見えるようにとか、そういう意識じゃなかったですか?

イチロー いや、自分が見えるために、例えば……なんだろうな……ケガをした選手の背番号を帽子に書いたりとかって、ボクはああいう行為っていうのは、全然ボクのスタイルではなくて、むしろ嫌いなんですよ。

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――心の中ですか、やっぱり。

イチロー 自分で思っていればいいわけですから。別に見ている人にそれを示す必要はないわけで。だから書くんなら裏側に書けよって思うんですけど。だから今回はボクは、それとは違うんですけど、初めてということが大きかったですね、日の丸を背負うことが。それはプロとしてのパフォーマンス的な部分もあったかもしれないですね。