第4回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は、米ロサンゼルスのドジャー・スタジアムに舞台を変え、いよいよきょうから決勝ラウンドに入る。明日22日10時(現地時間21日18時)からは、日本とアメリカによる準決勝が行なわれる予定だ。

 そのWBCの第1回大会が行なわれたのは、いまから11年前。2006年のきょう、3月21日(以下も含め日付はすべて日本時間)には決勝戦が米サンディエゴのペトコ・パークで行なわれ、王貞治監督率いる日本がキューバを下して優勝をはたした。試合中、日本は火曜の昼間だったが、テレビ中継の瞬間最高視聴率は50%を超えた。

王監督とイチロー ©佐貫直哉/文藝春秋

 もっとも、王ジャパンはここにいたるまで、決勝どころか準決勝進出すら危ぶまれた。第2ラウンドでは、アメリカに敗れ、さらに韓国にも第1ラウンドに続き連敗を喫す。アメリカ戦(12日)では「世紀の誤審」と呼ばれる判定から、勝ち越し点をふいにしたのが響いた。3対3で迎えた8回表、岩村明憲のレフトフライで、西岡剛が三塁からホームを踏むも、デービッドソン球審が、西岡の離塁が早かったとしてアウトを宣告したのだ。けっきょく試合は、9回裏のアレックス・ロドリゲスのサヨナラヒットで決した。

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デービッドソン球審に抗議する王監督 ©getty

 日本は第2ラウンドを1勝2敗で終えた。準決勝に進むには、同ラウンドの最終戦(17日)でアメリカがメキシコに僅差で敗れなければならない。しかし、メキシコはすでに敗退が決まり、ほとんど気力を失った状態だった。王ジャパンの面々も半ばあきらめながら試合をテレビで観ていた。そこへ番狂わせが起こる。3回裏、メキシコのホームランを、一塁塁審がフェンスに当たっていたとして二塁打と判定。その審判はまたしてもデービッドソンだった。メキシコはこれにかえって奮起し、2対1で勝利する。日本は失点率でアメリカとメキシコを上回り、準決勝に進めたのだった。

松中信彦 ©佐貫直哉/文藝春秋

 翌々日19日の準決勝では、韓国に完封勝ちして雪辱を晴らす。これで吹っ切れた日本は、キューバを迎えた決勝で底力を発揮する。8回裏に1点差まで迫られたものの、9回表には打線が爆発する。投手陣も、4回1失点に抑えた先発の松坂大輔ら4投手がリレーし、最後は大塚晶則が締めた。結果、10対6のスコアで、王ジャパンはWBC初代王者となったのである。

松坂大輔と上原浩治 ©佐貫直哉/文藝春秋

 じつは王は、福岡ソフトバンクの現役監督ということもあり、当初は日本代表監督を固辞していた。だが、球団オーナーの孫正義に「野球も世界一を競ってこそでしょう」と説得され、腹を固めたという(王貞治『もっと遠くへ 私の履歴書』日本経済新聞出版社)。第1回WBCではまた、クールなイメージのあるイチローが、思いのほか熱い意志を示し、リーダーシップを発揮したことも話題を呼んだ。なお、「世紀の誤審」のデービッドソン審判員は、今年2月に引退を発表している。

王貞治監督 ©佐貫直哉/文藝春秋