大谷徹さん ©文藝春秋

「もちろん、ものすごく悔しいですが、正直に言いますと翔平らしいなというのも親としては率直な感想なんですよ。というのも、大事な大会だとか、何か楽しみにしていたイベントがあるときに限って熱を出したり、ケガをしたりするのが翔平なんです」

 そう語るのは、大谷翔平選手(北海道日本ハムファイターズ)の父・徹さん(54)だ。

 大谷は、3月7日に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開幕戦での登板を期待されていた。だが、小久保ジャパンに大谷の姿はない。昨秋の日本シリーズやWBC強化試合で右足首を痛め、出場を辞退したのだ。

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 昨シーズンの大谷は、投手成績は10勝4敗、防御率1.86。指のマメをつぶし2カ月ほどマウンドを離れたため、勝ち星は過去4年で3番目だったが、クライマックスシリーズでは、気迫あふれるピッチングを見せ、球速165キロを連発して日本中のファンを沸かせた。

 昨年は打撃面での進化も著しく、二刀流の可能性を広げたと言える。打率.322、本塁打22本。長打率は6割弱、出塁率は4割を超えた。

©文藝春秋

「バッティングの基本的なことは、すべて父から教わった」と語るほど、特に打撃面では徹さんの教えがいまにつながっているようだ。

 徹さんは若いころ、三菱重工横浜で活躍した社会人野球の選手だった。引退後、故郷の岩手・水沢に戻り自動車のボディーメーカーに勤めながら、地元の少年野球の監督として大谷を育てた。

 大谷はあまり感情を表に出さない選手だ。しかし徹さんは「本来、感情量が豊富なタイプなのですが、大人になり、意識的に抑えている」と見る。

 メジャー・リーグへの挑戦は、高校時代からの夢。WBC終了後に始まる今シーズンは、日本での最後のシーズンになるかもしれない。

「文藝春秋」4月号では、徹さんへの10ページにわたるロング・インタビューを掲載している。WBC出場辞退の原因、「紅白歌合戦」出演の裏話、メジャーへの思い、渡米前の結婚の可能性など、肉親しか語れない、知られざる大谷の実像が明かされている。

昨シーズンは打撃で開眼 ©文藝春秋