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「日本の子どもは孤立している」児童養護施設出身者の“クモの糸”を増やすには

社会的養護の「その後」#2

note

「時間軸としては、ずっと縦につながっているからこそできるんだと思うんですよね。長く関係性を持っているからこそ、だからではないでしょうか」

「星美ホーム」の内観

日本の子どもたちが孤立していっている

 取材をしていく中で、ふっと「自分が子どもの頃、頼れる大人って何人いたかな」と考えた。大人に可愛がられるタイプの子どもではなかったし、両親以外に誰も思い浮かばなかった。そのことを前出の林さんに告げると、「まさにそうなんですよ」と答えた。

「そもそも子どもが孤立しているのが、今の日本の大きな問題ですよね。 頼りになる大人というと親と学校の先生の二本柱で、特に親に頼れなかったときに子どもが被るデメリットが大きすぎる。これまでだったらおじいちゃんやおばあちゃん、親戚、地域の人と、頼れるつながりがもっとあったはず。そうしたものが細くなってきているから、児童養護の子どもたちだけでなく、日本の子どもたちのリスクは上がっていると思います。

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 見方を変えると、同じことは大人たちにも言えますよね。密室で子育てしているような人が増えている。

 一部の自治体が、地域の人に子どもを預かってもらうのを仲介する『ファミリーサポート』という制度を実施しています。『仕事のときのみ利用可』など利用に色々と条件があるのですが、こうした制度をもっと気軽に利用できれば、子育てで息が詰まってしまった親が、うまく子どもと距離を取れるかもしれない。『ここに頼れる場所がある』と感じられれば、その親にとっての『クモの糸』が増えて、子どもも救われるかもしれない。

 もっと地域で子どもを育てるという感覚を社会全体で共有することが、めぐりめぐって児童養護の子どもたちのためにも、そうでない子どもたちのためにもなるんじゃないかと思います」

 

写真=深野未季/文藝春秋

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「日本の子どもは孤立している」児童養護施設出身者の“クモの糸”を増やすには

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