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新『おっさんずラブ』 #牧ロスで考える「ヒットドラマに“カップル萌え”」の法則

阿部寛×夏川結衣に、木村拓哉×松たか子……

2019/11/09
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夏川結衣に松たか子……ヒットドラマに“カップル萌え”あり

 たとえば、阿部寛主演の『まだ結婚できない男』。これは2006年に放送された『結婚できない男』の続編だが、阿部演じる建築家の桑野とアシスタントから共同経営者になった村上(塚本高史)と妹夫妻、母親以外のキャストは総入れ替え。中でも桑野と時に反発し合いながら関係を深めていった医師の夏美(夏川結衣)の枠が弁護士・まどか(吉田羊)に替わったことで、前作ファンの視聴者からは「なんか、違う」「夏美先生に出て欲しかった」との声も多く上がっている。

2006年放送『結婚できない男』に出演した阿部寛と夏川結衣 ©文藝春秋/getty

 また、『時効警察』『帰ってきた時効警察』に続き、12年振りに続編が作られた『時効警察はじめました』。こちらは『時効警察』シリーズお馴染みのキャストがほぼ再集結。総武警察時効管理課の霧山(オダギリジョー)と三日月(麻生久美子)のコンビも健在だ。が、新加入の彩雲(吉岡里帆)に対して「霧山と三日月くんの掛け合いに割って入って欲しくない」「2人の空気を壊さないで」という意見もかなりの数見受けられ、吉岡のインスタグラムにネガティブなコメントを書き込んだ視聴者に対し、吉岡本人が返信するという事態も起きた。

 平成の時代なら『HERO』で木村拓哉演じる久利生の相手役が雨宮(松たか子)から麻木(北川景子)に替わった時の戸惑いを思い出す。第1期の最終回、雨宮がカメルーンのサッカー代表選手の名前を全員暗誦したシーンで得た多幸感を第2期でバッサリ切り捨てられたようなあのやるせなさ。

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 ドラマにおける“カップル萌え”“カップル推し”のエネルギー量は、視聴者の作品に対する思い入れの強さに比例する。適当に流し見しているドラマであれば、続編や新シリーズで登場人物が替わったり、設定に大きな変更があってもさほど気にはならないものだ。

ドラマ『HERO』にて、主人公久利生公平(木村拓哉)の担当事務官を演じた松たか子と北川景子 ©文藝春秋/AFLO

ガチ勢の哀しみと痛みが生み出すエモーショナルな熱

 そういう意味でも『おっさんずラブ-in the sky-』は、内包する熱量が非常に高いドラマである。SNS等で評価が分かれるのも、単純な「肯定派」VS「アンチ」の構図ではなく、前作&“牧春”に思い入れが強いガチ勢の哀しみと痛みとが生み出すエモーショナルな熱があってのこと。一見ネガティブに見える書き込みも、底に流れているのは作品や登場人物への深い愛、なのである。

 愛、といえば、単発ドラマ時代から春田への叶わぬ思いを胸に抱き、輪廻転生を続けている武蔵にもそろそろ幸せになって欲しい。その相手が誰であっても、祝福する準備はできているお。

新『おっさんずラブ』 #牧ロスで考える「ヒットドラマに“カップル萌え”」の法則

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