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まさに“よるの朝ドラ” 月9「監察医・朝顔」には“視聴率が取れる3要素”が揃っていた

平均視聴率でトップ! 伝統のドラマ枠、復活の兆し

2019/09/02

 フジテレビの看板枠・月9(月曜よる9時)が一時期の低迷から脱しはじめている。『東京ラブストーリー』や『ロングバケーション』に代表される恋愛ドラマを主として放送し、それがのきなみ絶好調だった90年代は月9を見るためにOLが家に帰って街が静かになるとまで言われていた。ところが、00年代に入るといつしか恋愛ドラマが好まれなくなり、10年代では世帯視聴率が一桁台の連続なんてことも。月9廃止の噂も囁かれるほどだったのが復調しはじめたのは、脱・恋愛を図り、代わりに他局で安定の人気を誇る医療ものとミステリーものに舵を切ったことによる。みごとに功を奏して今期『監察医 朝顔」(以下『朝顔』)では14%台まで戻した。

現在放送中の月9ドラマ『監察医 朝顔」で主演を務める上野樹里 ©文藝春秋

“視聴率の取れる3要素”が揃った月9の誕生

『朝顔』は、法医学者の主人公・朝顔(上野樹里)と刑事である父(時任三郎)が各々、殺人事件に挑むドラマ。原作漫画では、朝顔の母が阪神淡路大震災で亡くなっているが、ドラマ化に当たって、東日本大震災で行方不明という設定に変わった。

 主人公が「医療」、父親が「ミステリー」を担当し、そこにさらに父と娘の「ホームドラマ」の要素も入っている。「ホームドラマ」とは「朝ドラ」要素と言い換えていい。そう、『朝顔』は「医療」と「ミステリー」に「朝ドラ」といま、世帯視聴率のとれる要素を3つ盛り込んだ、アイスやハンバーガーの三段重ね、ガンダムで言ったら「ジェットストリームアタック」みたいなスペシャルなことを行っているのである。

月9『ロングバケーション』を始め、前作朝ドラ『半分、青い。』の脚本を務めた北川悦吏子氏 ©文藝春秋

 そもそも『朝顔』がはじまったとき、「朝ドラぽい」と言われていた。『朝顔』というタイトルも朝ドラにありそうだし(フジテレビには『昼顔』があるが)、なにより出演者がちょうど放送中の『なつぞら』に出演している山口智子、戸次重幸が重なっていた。さらに主人公の母は石田ひかり。山口と石田、二大朝ドラヒロインの出演だ。風間俊介は朝ドラ『純と愛』のヒロインの相手役だ。ただ出演者に関しては、最近の民放ドラマは高視聴率の朝ドラで視聴者に馴染みが深くなった出演者をそろえる傾向にあるので、これはさほど特別なことでもない。しかも、昨年(2018年)の朝ドラ『半分、青い。』が『ロングバケーション』の脚本家・北川悦吏子を起用し、恋愛色の濃い朝ドラを作り、ロンバケのパロディまでやっていたので、何か言われる筋合いはないというところであろう。ともあれ、出演者をそろえることよりも、朝ドラ的ホームドラマの気配を持ち込んだところに『朝顔』のやる気を感じるのだ。朝ドラ的ホームドラマの気配とは何か。