文春オンライン

まさに“よるの朝ドラ” 月9「監察医・朝顔」には“視聴率が取れる3要素”が揃っていた

平均視聴率でトップ! 伝統のドラマ枠、復活の兆し

2019/09/02
note

朝ドラには必須の「嫁ぎの儀式」も

『朝顔』は東日本大震災で母が行方不明になって8年めの主人公・朝顔と父のふたり暮らしではじまり、中盤から朝顔の夫(風間俊介)が同居して、ひとり娘も誕生する。父娘のふたり暮らしのときから、ふたりが食卓に向き合いご飯を食べるシーンが多かった。そばには家族写真がたくさん飾ってあり、会話の話題は洗濯や掃除。この家の感じがザッツ昭和の家といった風情で、居間は当然、和室、その向こうが庭。それをわりとフラットなカメラアングルで撮る。これがもう朝ドラでよく見る構図なのである。この雰囲気だけで「よるの朝ドラ」と呼びたくなる。それだけではない。

 のちに朝顔が嫁に行くとき、父親に涙しながらこれまで育ててもらったことを感謝する。これも朝ドラの基本パターンだ。朝ドラを研究した拙著『みんなの朝ドラ』で行った脚本家・大森寿美男のインタビューでも「嫁ぎの儀式は必須」と語られており、『なつぞら』でもなつ(広瀬すず)が白無垢姿で育ての祖父(草刈正雄)に「ありがとう」と涙ながらに挨拶していた。もちろん、それを毎シリーズ必ずやっているわけではないが、ヒロインが成長する過程で嫁ぎ、出産、育児するという流れがたいてい描かれるのが朝ドラである。

主人公・朝顔(上野樹里)の父親役を務めているのは時任三郎 ©時事通信社

ADVERTISEMENT

 通常、医療のエキスパート、事件解決のエキスパートの活躍を描くドラマは、主人公たちの日常(家庭)生活はあまり描かれない。それが『朝顔』では、医療や事件解決のエキスパートたちが次々と殺人事件を解決していくスリルもあるうえ、それを行っている人物の生活や家族の関わりも描かれることで視聴者がいっそう親しみやすい。