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鳥集 徹
2017/03/01

芸能人のみなさん、SNSで安易にがん検診を勧めないでください

若い人には害の方が大きいことも。がん専門医も認め始めた新常識

 芸能人やメディアのみなさんにお願いがあります。ブログやSNS、ネット記事等で、がん検診を安易に勧めないでください。無条件にいいことだと思われていますが、がん検診にはデメリット(害)もあります。よかれと思ってしたことで、かえって多くの人に害を与えてしまうことになるかもしれないのです。

 ここ数年、がんにかかったことを公表する芸能人が相次いでいます。昨年6月9日、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが記者会見を開き、妻でフリーアナウンサーの小林麻央さん(34)が「進行性の乳がん」であることを公表し、大きな衝撃を与えました。この2月18日(土)にも、女優の藤山直美さん(58)に初期の乳がんが見つかったと報道されました。藤山さんは10年前から乳がん検診を受けており、今年1月の検診で要再検査となったそうです。

医療機関に乳がん検診を希望する若い女性が殺到 

乳がん闘病を公表した小林麻央さん ©文藝春秋

 こうした報道があると、必ずと言っていいほどネットでは、がん検診の受診を促すメッセージが盛んに発信されます。北斗晶さんが乳がんを告白したときも、20代、30代の若い女性芸能人が相次いでブログやSNSなどで乳がん検診を呼びかけました。その影響で、医療機関には乳がん検診を希望する若い女性が殺到したそうです。

 芸能人のみなさんも、乳がんで命を落す人が一人でも減るようにと、良心から乳がん検診を呼びかけたのだと思います。ですから、その善意をとがめる気はまったくありません。

 しかし、乳がん検診の推奨年齢に制限があることを、みなさんはご存知だったでしょうか。乳がん検診は現在、乳房専用のX線装置であるマンモグラフィで行われていますが、国のガイドラインによると、マンモグラフィ単独法の推奨年齢は40~74歳、マンモグラフィと視触診の併用法は40~64歳とされています。なお、超音波検査をがん検診(対策型検診)として行うことは、どの年齢でも推奨されていません(国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがん検診推進のページ」)。

 若い女性の乳がん検診は害の方が大きい

 なぜ、20代、30代には、乳がん検診が推奨されていないのでしょうか。それは、乳がん罹患率が高くない若い女性が乳がん検診を受けると、メリットよりもデメリット(害)のほうが大きいと判断されているからです。

 乳がん検診に、どんなデメリット(害)があるのでしょうか。まず挙げられるのが、「放射線被ばく」に伴う発がんリスクです。このリスクは若い女性ほど高いとされていますから、しこりが心配で乳がんの検査を受けるとしても、20代、30代は原則的に、放射線被ばくをするマンモグラフィは受けるべきではありません。

 次にあげられるのが「偽陽性」の害です。偽陽性とは、結果として乳がんではなかったのに、「要精密検査」とされてしまうことを意味します。乳がんの精密検査では、乳房に針を刺して組織の一部を採取する「針生検」が行われていますが、針で痛い思いをするだけではありません。深刻なのは「がんかもしれない」と心配になることで被る精神的な苦痛です。結果が出るまで不眠になってしまう人や、検査後もずっと不安に苛まれる人がいるのです。

米国では発見された「乳がん」の3分の1が過剰診断

 そして、もっとも深刻なのが、「過剰診断」の害です。これは「命を奪わない病変」をがんと診断してしまうことを指します。がんと言えばすべてが命取りになると思われていますが、そうではありません。自然に消えてしまうものや、ずっと大きくならないもの、大きくなっても命取りにならないものなど、さまざまな病変があります。

 乳がんでは、マンモグラフィ検診が普及した結果、「非浸潤性乳管がん(DCIS)」という超早期の病変がたくさん見つかるようになりました。この中には、放置すると周囲に広がって命を脅かすものもありますが、そのままじっとして広がらないものもあるそうです。しかし、現代の医学では、どの人がどちらなのか見分けがつきません。

 そのため、「がん」を見つけてしまった以上は、過剰診断だったとしても放置できないので、ほとんど全員が、手術、放射線、抗がん剤、ホルモン剤などの治療を受けることになります。つまり、無用な治療を受ける可能性を排除することはできないのです。

 実はここ数年、この過剰診断が予想以上に多いことが、欧米の研究で指摘され始めています。2012年に報告された論文では驚くべきことに、米国の検診でこれまでに見つかった乳がんのうち約3分の1が過剰診断で、過去30年間に約130万人もの女性が、無用な治療を受けたと推計されています(N Engl J Med. 2012 Nov 22;367(21):1998-2005.)

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