芸能人やメディアのみなさんにお願いがあります。ブログやSNS、ネット記事等で、がん検診を安易に勧めないでください。無条件にいいことだと思われていますが、がん検診にはデメリット(害)もあります。よかれと思ってしたことで、かえって多くの人に害を与えてしまうことになるかもしれないのです。
ここ数年、がんにかかったことを公表する芸能人が相次いでいます。昨年6月9日、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが記者会見を開き、妻でフリーアナウンサーの小林麻央さん(34)が「進行性の乳がん」であることを公表し、大きな衝撃を与えました。この2月18日(土)にも、女優の藤山直美さん(58)に初期の乳がんが見つかったと報道されました。藤山さんは10年前から乳がん検診を受けており、今年1月の検診で要再検査となったそうです。
医療機関に乳がん検診を希望する若い女性が殺到
こうした報道があると、必ずと言っていいほどネットでは、がん検診の受診を促すメッセージが盛んに発信されます。北斗晶さんが乳がんを告白したときも、20代、30代の若い女性芸能人が相次いでブログやSNSなどで乳がん検診を呼びかけました。その影響で、医療機関には乳がん検診を希望する若い女性が殺到したそうです。
芸能人のみなさんも、乳がんで命を落す人が一人でも減るようにと、良心から乳がん検診を呼びかけたのだと思います。ですから、その善意をとがめる気はまったくありません。
しかし、乳がん検診の推奨年齢に制限があることを、みなさんはご存知だったでしょうか。乳がん検診は現在、乳房専用のX線装置であるマンモグラフィで行われていますが、国のガイドラインによると、マンモグラフィ単独法の推奨年齢は40~74歳、マンモグラフィと視触診の併用法は40~64歳とされています。なお、超音波検査をがん検診(対策型検診)として行うことは、どの年齢でも推奨されていません(国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがん検診推進のページ」)。