昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

山本 一郎
2017/06/08

「人工知能が採用面接で人間を見抜く時代」の欺瞞と憂鬱

だからバブルは繰り返す

 人工知能(AI)そのものではないのですが、その人工知能を稼働させるためのデータを整備する会社にいくつか投資をしている関係で、昨今の「なんでも人工知能が問題を解決してくれる」的なネタに敏感になってきました。

 まあ、一言で言えば「それができたら苦労しねえよ」って話で。

「人工知能」のような大きい言葉で騙しに行く「仕組み」

 先日も、某大新聞が「6000サンプルを参考に、新卒大学生の採用試験を人工知能に任せることにしました」的な報道を大々的にして、いわゆる人事評価や採用のデータを取り扱うサイエンス系が「そんな話、どこにあるの?」と騒然としたわけです。また某大手通信会社の薄毛社長が人工知能に投資して採用に活かすみたいな発言をしていたので、なんか私たちも知らないような凄い統計学バックグラウンドの秘伝のタレでもあるのかと思ってました。

©iStock.com

 蓋を開けてみれば、単純に大学生が企業の採用面接を受ける際のエントリーシートの手捌きを自動化しましたという話にすぎないことが分かり、羊頭狗肉の最たるものだったわけですけれども、昨今の人工知能を巡る万能神話は、バブルを超えて何か別のモノなんじゃないかぐらいの勢いを錯覚させられます。

 もちろん、内実を伴わないので人工知能バブルもどこかで破たんすることになるのでしょうが、この手のビジネス系の話題が紡ぎだす先端技術によるバラ色の未来というのは、オランダのチューリップバブルや南海泡沫事件以降の繰り返すバブルを肌で感じていろんな想いが去来します。過去にも名著『バブルの歴史』(エドワード・チャンセラー著)で戒められていたのですが、そういうバブルに踊る人たちが増えることで、その人たち相手の商売で儲かる人たちがいっぱいいる限り、人工知能のような大きい言葉で騙しに行く仕組みはなくならないんだろうと思うのです。