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奄美大島ノネコ問題 命を守りたい人々と環境省との激しい攻防――「猫3000匹殺処分計画」その後

2020/02/01

genre : ニュース, 社会

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譲渡認定人だけで猫を引き受けるのは限界

 現在は、譲渡認定人が希望すれば、島外で不妊去勢手術を行うことが可能になった。しかしその場合、全額自費である。手術やワクチン接種などで1匹の猫を引き取るのに1万5千円~3万円程度かかるという。加えて東京までの空輸代が7000円前後かかる。

 譲渡される側は空輸代に加えて、猫の引き取りが捕獲から1週間を超える場合は、1日ごとに超過料金も払わなければいけなくなった。計画スタートから1年半、いまだかつて奄美ノネコセンターで一度も、上限数である50匹を一気に収容したことなどないのに、「明日収容上限を上回るかもしれないから」という理由で、猫の飼育期間、すなわち殺処分までのカウントダウンの日数は1週間より伸びることがないのだ。

〈奄美大島で殺処分は行われていません〉

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 譲渡認定人の1人である服部由佳氏は「この言葉を見るたびに奄美大島でも認定人を増やす努力をしてほしいと思う」という。奄美大島の猫を奄美大島の島民が引き取るのではなく、島外の沖縄や、遠く離れた東京で引き取るケースが9割を超える。

服部由佳氏 ©笹井恵里子

「2019年末までに捕獲されたノネコは135匹。登録している譲渡認定人は14人(2020年1月30日時点)、実際に猫の譲渡を請け負ったことがある人は10人です。その少人数で捕獲後から1週間以内に必死に猫を引き取っています」(服部氏)

 齊藤氏も怒ったように言う。

「あなたたち、猫が大好きだからどんどん持っていきたいんでしょうというニュアンスで、先日奄美大島の方に言われました。冗談ではありません。仕方なくやっている。できれば地元で解決してほしい。なぜ捕獲されたエリアの一番近い集落にさえ情報をオープンにしないのでしょうか」

 服部氏や齊藤氏を含むわずか10人の譲渡認定人は、毎週必死に「猫を引き取る」と手を挙げている。手を挙げすぎてしまったばかりにキャパシティをオーバーしてしまい、疲弊してしまった動物愛護団体もある。昨年12月より猫の捕獲数が急激に多くなり、譲渡認定人の間だけで猫を引き受けることがもはや限界だ。それなら、殺処分も止むを得ないのではないかと、あなたは考えるだろうか。

福島みずほ議員(8月のノネコ集会) ©笹井恵里子

 福島みずほ議員は「譲渡の要件を緩和し、オープンに〈奄美大島の猫を引き取りませんか〉というキャンペーンをしてもらえたら、と思う」と話す。

 そうなのだ。現在、捕獲された猫の譲渡は秘密裏に進められている。

 補足すると、もしあなたが奄美大島で捕獲された猫を譲り受けたいと思ったら、「奄美大島ねこ対策協議会」に必要書類を提出し、審議会をパスして「譲渡認定人」として登録されなければならない。審議会で行われる「申請者の審査会」が私にはブラックボックスのように感じる。「審査」される事柄があいまいだからだ。

 現在、譲渡認定人は私を含めて14人(2020年1月30日時点)。猫が捕獲されると、この14人に向けて「猫収容のお知らせ」というメールが一斉配信される。逆にいうと、譲渡認定人にしか捕獲された猫の情報は知らされない。猫の写真も非公開だ。毎回捕獲された猫の情報とともに「もし猫の写真を公開したら、譲渡認定人の資格を剥奪する」というような、脅しともとれる文書がメールで送られてくる。