昨年末より奄美大島で猫の捕獲ペースがあがっている。計画1年目の2018年11月は2匹、12月は1匹に対し、計画2年目の2019年11月は14匹、12月は25匹だ。今年に入ってからは現在のところ14匹が収容、これまでで総計149匹の猫が捕獲(1月26日時点)された。
今回記事執筆に至ったのは、猫の捕獲ペースがあがる中で、猫を捕獲してから飼育に至るまでの状況が目に見えて悪化し、特別猫好きでない私から見ても、これに目をつぶることはできないと思ったからだ。死に至らないまでも、奄美大島の猫は傷つき、常に危険な状況にさらされている。また譲渡認定人だけで引き取ることも限界を迎えつつある今、殺処分は今日明日に起きてもおかしくない。
半年前から激しさを増す、環境省と猫の命を守りたい人たちとの攻防を伝える――。
「子猫を1日絶食させるなんて考えられません」
「捕獲された“猫の安全”が担保されるまで、奄美大島における猫の捕獲事業を中止してほしいと思う」
獣医師の齊藤朋子氏は環境省職員を前に、そう強く言った。参議院議員会館でおよそ半年前の2019年8月30日、奄美のノネコ問題について少人数で集会が開かれたのだ。そこで齊藤氏は「捕獲された猫の命を守る」よう、繰り返し訴えていた。
「生後2、3か月の子猫は低血糖や低体温になりやすい。獣医師として子猫を1日絶食させるなんて考えられません。それなのに奄美大島ではワナの見回りが1日1回だと言います。もし子猫がそのワナにかかって、24時間飲まず食わずでいたらどうなるか……死亡要因にもなり得ます」
その日、集会に参加していた福島みずほ議員もこう言う。
「奄美大島に生息する希少種を(猫から)守りたいという環境省の思いは理解します。だからといってこういった捕獲方法では動物愛護法の観点から問題があるでしょう。つまり希少種を守るためなら、何をしてもいいという時代ではもうないと思います」
環境省が奄美大島で進める「3000匹の猫殺処分計画」は今も続いている。
私は「週刊文春」2019年4月18日号で特集記事「奄美大島『世界遺産』ほしさに猫3000匹殺処分計画」を、そして同年6月30日に文春オンラインにて「世界遺産のために猫を殺すのか――奄美大島「猫3000匹殺処分計画」の波紋」を発表した。