動物愛護法の“あいまいさ”
取材に来ていた朝日新聞特別報道部の太田匡彦記者は、質疑応答の際に、動物愛護法の“あいまいさ”を指摘した。
「動物愛護法では愛護動物に対し、みだりに給餌給水をやめることにより衰弱させた場合に罪に問われる。“みだりに”という文言を、環境省は24時間に1回の給水でも違反ではないと解釈していることになる。私も普段、ペットの繁殖業者を取材しますが、彼らも言うんです。丸1日以上入れ替えていないような汚い水を与えていたとしても、こちらの指摘に対して『(犬猫は)健康だよ、生きている』と。それと同じ論法を環境省が用いるのはいかがなものか。昨年動物愛護法が改正され、人と動物の共生がより求められる現代で、本来は環境省がその地点を率先して目指していかなければいけない。
クロウサギと猫の両方を守りたいなら、せめて24時間に1回の見回りを、12時間に1回にするなどの姿勢が必要ではないかと思います」
太田記者の意見に私も大いにうなずける。続けて福島みずほ議員がこう話す。
「現状を少しでも良くしたい。猫を傷つけないように、猫が苦しまないように、できるだけ速やかに収容センターに運ぶようにもう少し努力ができないだろうか」
傷口を食いちぎって死亡した猫
捕獲された後も猫は危険にさらされる。
2019年5月、捕獲された猫が不妊去勢手術後に傷口を自ら食いちぎって、出血多量で死亡した。当時すでにこの猫の引き取り手は見つかっており、飼い主となる予定のAさんは、奄美大島に出向いて講習を受け、東京の自宅で猫を迎え入れる準備をしていた。しかし捕獲された猫は「奄美大島ねこ対策協議会」が指定する獣医師のもとで不妊去勢手術を受けなければ島外に出すことができなかった。
遺体の写真と、診断書を見た齊藤氏がこう話す。
「私はこれまでに約1万6000件の野良猫の不妊去勢手術を行いましたが、傷口を嚙み切り死亡した症例はありません。死亡に至るまでに猫が大きな苦痛を伴ったことは明白です。傷口の大きさや使用した糸、縫合に問題はないか、術後管理に問題はなかったか、検証すべき点があると考えます」
東京都獣医師会中央支部長の神坂由紀子氏も「通常の手術であれば考えられないこと」という。
「私も獣医師として多くの飼い猫や保護猫の不妊去勢手術を行いましたが、このような事故は1件もありません。この事故が本当に説明にあったように、猫が嚙みちぎって起きたのでしたら、術後の管理がずさんであると思います。また飼い主となる予定だったAさんが病理解剖のために遺体の引きとりをお願いしたのに断られたと聞きました。その姿勢にも疑問を感じます」