6月12日に参議院議員会館講堂にて「奄美大島『ノネコ管理計画』見直しを求める院内集会」が行われ、福岡大学の山崎好裕教授や、奄美大島で猫の無料不妊手術病院を運営する佐上邦久氏、獣医師の齊藤朋子氏、朝日新聞特別報道部の太田匡彦記者、私が登壇した。ちょうど、虐待罪の厳罰化などを盛り込んだ「改正動物愛護法」が成立した日だった。興奮冷めやらぬ福島みずほ議員や川田龍平議員をはじめ驚くほど多くの国会議員も入れ替わり立ち替わり集会に訪れ、ノネコ管理計画の「見直し」に賛同する意見を述べ、「調査をやり直さないと、税金の使い道としてどうなのか?」という声も挙がっていた。
クロウサギの死因トップは「交通事故」
集会で山崎教授は、「私は経済学の専門ですから」と前置きした上でこう話していた。
「ノネコが希少種にとって脅威になっている可能性があるといわれますが、想定されるあらゆることに可能性はあります。可能性があるかどうかではなく、それがどのくらいの大きさなのか、他の可能性に比べて大きいのか小さいのかが問題でしょう。ノネコ対策を最優先にして、そこに税金を投入しなくてはいけないほどの必要性は感じられません」
環境省が発表しているクロウサギの死因調査(2000年~2013年)を見ると、犬や猫に捕食されたと断定されたものはわずか10パーセント。原因が判明している死因では交通事故が最も多い。とりわけ2018年は前年より5匹多い39匹が交通事故で死ぬという、過去最多であった。希少種保全のために税金を投入した政策を実行するというなら、まずは交通事故死への対策を第一に考えるべきだろう。
また、「ノネコ管理計画」の要となり、国が公表した3つの数値があやうい。
1)「クロウサギ」は10倍に増えていた
守りたいとされるクロウサギは“絶滅の危機”どころか食害が出るほど増えていると、地元のガイドから話を聞いていた。増えた理由は、かつて人が野に放って莫大に増えたマングースの駆除が進んだためという見方が強い。
しかし環境省は2003年、つまり16年も前の調査結果で推定生息数「2000~4800頭」とし、以降は公に数値を公表していない。本来なら計画のスタート時点で、現在のクロウサギの数を公表し、もしかつてより減少傾向にあるのなら、「何匹まで回復させる」というビジョンを描くべきではないのだろうか。