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 現在のクロウサギの生息数はどれほどであるのか。これについては今年3月、朝日新聞の太田匡彦記者がスクープした。

〈「絶滅危惧種」で生息数が数千匹と推定されているアマミノクロウサギについて、環境省が2015年時点で、奄美大島(鹿児島)だけで約1万5千~3万9千匹にまで回復しているとの推定結果をまとめたことがわかった〉(3月25日付朝日新聞夕刊)

 なんと環境省は2015年時点で、クロウサギが12年前の2003年より10倍以上増加しているという実態をつかんでいた。なぜそのデータを伏せたまま「ノネコ管理計画」をスタートさせたのか。

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2月に出会ったクロウサギ

 さらに記事では環境省が2023年度までに、クロウサギを今より絶滅の危険度が低いランクに見直す可能性があることにも触れている。集会で登壇した太田記者は、今から4年後に絶滅危惧種ではなくなるかもしれないクロウサギのために、2027年度までノネコ管理計画が続けられることの矛盾点を指摘していた。

2)「ノネコ」は推定されるほどいないのではないか

 ノネコの数は、ノネコ管理計画では約600~1200匹と推定され、環境省は年間300匹捕獲する目標を設定した。しかし、2018年度は環境省が掲げる目標値に遠く及ばず43匹の捕獲数だ。環境省奄美野生生物保護センターは、

「捕獲の技術をこれから改革していかなければならない。技術が未熟だというところがあって、猫の数が想定より少なかったということではない」と、あくまで推定生息数600~1200匹という数値は正しく、年間300匹捕獲できるという姿勢を崩さない。

ノネコを受け取る齊藤氏

 もう一つ、気になるのはノネコの餌の量だ。〈ノネコ1頭が1日に摂取している餌の量の平均は、378・4gと見積もられ、この量はケナガネズミとクロウサギでは1頭ずつ必要になる〉ため、〈希少種に及ぼすノネコの捕殺影響は甚大なものとなる可能性が高い〉と、同計画書にある。

 しかし、これまで奄美大島からノネコ8匹引き取ってきた前出・獣医師の齊藤氏は「体重4キロの成猫でキャットフードなら1日約90グラム前後が標準量」と話す。この約4倍もの量を野生の猫が日々食べて初めて〈ノネコの捕殺影響は甚大なものとなる〉のだ。そしてこの見積もり値が引用されている論文では「ノネコによって年間1万匹のクロウサギが捕食されている可能性」とある。考えてみてほしい。もし本当に「600~1200匹のノネコ」が、それだけの勢いで「2000~4800匹」のクロウサギを摂取しているようなら、クロウサギはとっくの昔に絶滅しているのではないだろうか。