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3)「野良猫」も推定数ほどいなかった

「野良猫が山中に入ると、ノネコとなる」という理由から、市街地に生息する野良猫の数も重要だ。奄美大島ねこ対策協議会では野良猫の推定生息数(奄美5市町村)を5000~1万匹と公表していた。奄美大島5市町村で実施している野良猫の不妊去勢手術数は年間1000頭を予定しており、それでは繁殖スピードに到底追いつかない。

 そこで公益財団法人どうぶつ基金理事長佐上邦久氏は昨年8月、奄美市内に無料不妊手術病院「あまみのさくらねこ病院」を開設した。市街地の野良猫に不妊手術を施すことが奄美大島から猫を減らす有効な策だと考えたのだ。ところがあふれるほどいるはずの野良猫も、行政が推定するほど見かけなかったという。

あまみのさくらねこ病院は6月末に閉院

「不妊手術を急ぐのが奄美大島から猫を減らす有効な策だと思って、寄付金の1000万円を投じて病院を建設し、10か月間運営してきました。役員は無報酬で、不妊手術はすべて無償で行いました。しかし行政の野良猫推定生息数は嘘八百だったんです。

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 私たちは奄美市内10か所で見回りを行い、住民への聞き取りと猫の数を調査しました。その結果、野良猫は行政が公表する3分の1、2000匹と算出しました」

 あまみのさくらねこ病院が実施した「ノラ猫調査」を見せてもらった。行政と同様の地域で調査を行い、一匹一匹の野良猫の写真もきちんと撮影している綿密さだ。

「ノラ猫調査」によると、野良猫の90%は不妊手術を終えていた。あまみのさくらねこ病院は不妊手術をした目印として猫の耳先をさくらの花びらのように「V字カット」するのだが、その印があったということだ。

 不妊手術をしていても、一代限りのその猫がクロウサギを襲う可能性はもちろんある。しかし、前述した通り、ノネコを捕獲しなくても、クロウサギは2003年から2015年までの間に10倍以上も増えている。今後市街地の不妊手術を終えた野良猫がノネコ化したとしても、クロウサギの頭数に壊滅的なダメージを与えるとは考えにくい。

 これらの状況から、森林内のノネコを排除するノネコ管理計画を残り9年も実行すること、そこに税金を投入することの意義が今問われている。

第3回に続く