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猫の命を守るために闘う人々の証言――奄美大島「猫3000匹殺処分計画」の波紋 #3

2019/06/30

genre : ニュース, 社会

 筆者は今年2月に続いて、5月に再び奄美大島を訪れた。獣医師の齊藤朋子氏(NPO法人「ゴールゼロ」代表)が捕獲されたノネコを引き取りに訪れるというので、同行させてもらった。

 捕獲した猫の一時収容施設「奄美ノネコセンター」の壁には子供たちの絵が貼られている。「奄美の自然を守ろう」というテーマなのだが、ノネコがクロウサギをくわえていたり、ノネコとクロウサギが対決していたり、どう見ても猫が悪者になっている絵だ(写真)。ちなみに「ノネコがクロウサギをくわえている姿」を描いている絵は、環境省が「ノネコによる食害」の根拠として、さまざまな啓蒙イベントで使う1枚の写真とそっくりだった。

「奄美ノネコセンター」の壁に貼られた子どもたちが描いた絵
「奄美ノネコセンター」の壁に貼られた子どもたちが描いた絵

「これって子供たちが洗脳されているということではないんでしょうか」

 齊藤氏が怒ったように言う。

ノネコを引き取るには1匹あたり1万円程度かかる

 奄美ノネコセンターに足を踏み入れた。生後2か月の子猫はなんともかわいかった。反対に捕獲時に暴れたらしい顔が傷だらけの猫を見て胸が痛んだ。

 ノネコ管理計画の根本的な見直しを私は望むが、今すぐにそれが難しいのなら、少なくとも「殺処分前提」という姿勢を改めるべきだ。捕獲した猫の殺処分を急ぐ理由はどこにあるのか。

 奄美大島の猫の命を守るために闘ってきた人々を紹介する。

 奄美大島からこれまで捕獲されたノネコを最も引き取ってきたのは、沖縄の「動物たちを守る会ケルビム」という動物愛護団体だ。代表の中村吏佐氏がこう訴える。

「二つ改善してほしいです。一つは、ノネコ管理計画に予算があるのなら、譲渡にまつわる費用に補助を出してほしい。もしくは自分たちの近くの動物病院で処置を受けさせてほしい」

 ノネコを引き取る際、奄美大島の動物病院で不妊手術とマイクロチップの処置を受けなければ島外輸送ができない。費用は引き取る人が持つのだが、マイクロチップの装着代が先日、4000円から5000円に値上がりした。離島のため沖縄への空輸費も発生し、1匹あたり1万円程度の費用がかかるという。つまり、これまで30匹以上のノネコを引き取ってきた中村氏は、「猫を引き受ける」だけで30万以上の費用を負担している。当然ながらそのあとも飼い主が見つかるまでは飼育するため、その費用もかさむ。

 また処置を受けるのは、奄美大島ねこ対策協議会が指定する動物病院に限られる。先日、島内動物病院で不妊手術後、傷口をかみきり内臓が飛び出し、翌朝亡くなったノネコがいた。引き取り人が信頼する動物病院で処置を受けさせるべきではないのだろうか。