1ページ目から読む
2/3ページ目

「もう一つは、譲渡の間口を広くしてほしいんです。どうして奄美市のホームページなどで捕獲された猫たちの写真を公開しないんでしょう。所得証明や家の間取り図などの書類を提出して譲渡引き受け人に認定されないと、捕獲された猫の情報がわからないなんておかしな話です。そして収容センターにスペースがあるのですから、1週間といわず、もう少し奄美ノネコセンターでの飼育期間を延ばしてもらえないでしょうか」

ネコ収容メール

 猫の一時収容施設「奄美ノネコセンター」の収容上限は50匹。現状、1年間の捕獲数(43匹)さえそれを下回っているのに、捕獲してたった1週間という飼育期間、すなわち殺処分までのカウントダウンの日数は変更されない。

 これに対し、環境省は「明日、収容上限を上回る猫が捕獲されるかもしれないから」と説明する。

ADVERTISEMENT

 中村氏が「本当にもう引き受けることが厳しい」とこぼす。

「でも、うちで引き取らなかったら、みんな処分されてしまうんですよ。だから殺させないために死ぬ思いで引き取っています」

◆◆◆

シンポジウム

「ちよだニャンとなる会」代表の香取章子氏は4年前、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室が主催し、電通がプロデュースする「いま、希少種があぶない!! 希少種とノネコ・ノラネコシンポジウム」に登壇者(パネラー)として招かれたという。

「そうしたら最も持ち時間の長いパネラーから早く奄美大島で猫の殺処分を始めましょう、その方法は銃か罠か毒エサかという恐ろしげな話が次々と出て、座長も他のパネラーも猫の殺処分を容認する発言ばかり。私一人『殺処分する必要はない』と訴える状況でした。でもこんなに当たり前のことがなぜ理解できない、クロウサギが絶滅したら取り返しがつかないと、取り囲まれて説得されているような状況で……」

 そして翌年のシンポジウムでは、会場も座長も他のパネラーも全て同じで、香取氏のみが入れ替わっていたという。

「苦笑いでした。希少種は守らないといけない。でも、その方法が問題です。ヨーロッパでは交通事故死を防ぐためにさまざまな方策がとられている。その努力をしないで、目の前で見えやすくて弱くて殺しやすい猫にすべてを向けるのはどうなんでしょう」

◆◆◆

「なんでも猫のせいにしやがって」

 奄美大島で27年間、ネイチャーガイドをしていた荒田さんがそう話していた。ガイドツアーに申し込む人々の大半は「クロウサギ」が目当てだから、ガイドの立場からすればクロウサギが増えるほうが都合がいい。しかし、荒田さんは「クロウサギが減ったのは猫のせいじゃない。猫がクロウサギを絶滅させるなどあり得ない。人間の開発が原因だ」と訴えてきたという。

 今年4月、荒田さんは病気のため亡くなった。お墓まいりに同行させてもらい、皆とお線香を手向けると、その中の一人、獣医師の齊藤氏がその場で嗚咽をあげた。

「荒田さんが言った通り、クロウサギは10倍ぐらいに増えていたことが朝日新聞の調査でわかりました。荒田さんの思いを引き継いでノネコ管理計画の見直し、捕獲の中止を訴えていきます」