環境省が奄美大島で進める「3000匹の猫殺処分計画」が大きな波紋を呼んでいる。

 6月12日には参議院議員会館で計画の見直しを求める集会が開かれ、私も参加した。インターネットでの議論も噴出している。私が「週刊文春」4月18日号で発表した特集記事「奄美大島『世界遺産』ほしさに猫3000匹殺処分計画」は反響を呼び、朝日新聞社の言論サイト「論座」では「ノネコ管理計画へのイチャモン」と批判された。

 今回、その後の動きや、現地で活動してきた関係者の思いをここに記すことで、本当に多数の猫を処分する計画が妥当なのか、今一度奄美大島で認められている「殺処分の是非」を考えてほしい。(全3回の第1回)

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殺処分前提の計画だった

 環境省は2018年7月、奄美大島で野生化した猫(=ノネコ)を捕獲する「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画(以下、ノネコ管理計画)」(2018年度~2027年度)をスタートさせた。奄美大島の山林に生け捕り用のわなを設置し、捕獲したノネコを収容センターで飼育する。飼育期間は、捕獲から1週間が目安で、その間に飼い主を募る。

〈譲渡できなかった個体は、できる限り苦痛を与えない方法を用いて安楽死させることとする〉(ノネコ管理計画)

 捕獲目標は年間300匹で、それを10年間続けるという。

 計画の策定理由を私が問い合わせると、環境省は「近年、ノネコが国内希少種であるケナガネズミ、アマミノクロウサギ(以下、クロウサギ)などを捕食していることが自動撮影カメラや糞分析により確認され、生態系への被害が明らかなため」などと文書で回答した。

奄美市役所

 保全生物学を専門とし、野生動物と人との軋轢について研究する川口短期大学の小島望教授は、「殺処分を容易にするような仕組み」と批難する。奄美市環境対策課内にあり、現地でノネコ管理計画に取り組む「奄美大島ねこ対策協議会」に小島教授が聞き取り調査をすると、「本計画は殺処分が前提だ」とはっきり言われたという。

「計画書にあるように“譲渡に努め”るなら、もっと飼育期間を長く、そして捕獲情報の告知に力を注ぐべきでしょう。現状は多くの猫を『ノネコ扱い』にして、速やかに効率的に猫を殺処分したいという意図が働いているといわざるを得ません。そもそも私はノネコという定義を満たす、すなわち集落に全く依存せず野生の状態で生きている猫はほとんどいないと考えています」(小島教授)

“ノネコ扱い”とはどういうことか。