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将棋界賞金ランキング、駒からマイクへ持ち替える女流棋士、先輩記者からの大目玉

将棋界賞金ランキング、駒からマイクへ持ち替える女流棋士、先輩記者からの大目玉

棋士と棋界の1週間 #7

2020/02/12
note

 飯島栄治七段と大石直嗣七段の将棋も気になっていた。飯島七段は何年か前までB級1組に在籍していたが、前期に降級点を取り今期もここまで2勝。田村七段より順位が低く、まさに崖っぷちの状況である。

 田村さんには昔からお世話になっているし、横山さんはサッカーをやったりライブに行ったりする。大石さんは我が家に遊びに来てくれて、夜を徹してカードゲームに興じたりもした。飯島さんにいたっては、彼だけで上中下の薄い本を書けるくらいのエピソードがある。

 誰かが勝てば誰かが負ける。記者にできることは、現場で戦いぶりを見て結果を受け止め、将棋指しの心情に寄り添おうとすることくらいである。

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ノンアルコールの金井さんが解説してくれた

 そのような高尚な考えを持つ私だが、4時間後には近くの店でビールを飲んでいた。対局は続いていたけれど、誘われたら仕方ない。記者仲間2人、不幸にもその場に居合わせた金井恒太六段の4人で外に出たのだった。

 テーブルには名人戦棋譜速報(http://www.meijinsen.jp/)を開きっぱなし。あれこれ言いながらお酒を飲むのは楽しいね。さっきまでは記者、いまは観る将の飲み将。我ながらさすがの変わり身である。ノンアルコールの金井さんが解説してくれたのもありがたかった。

©iStock.com

 注目の横山-田村戦と飯島-大石戦の終局時には、種目変わってワイングラスを持っていた。

 勝ったのは田村さんと飯島さんで、まずは厳しいところをひとつしのいだ。横山さんはまだ自力だが、次は降級点に絡んでいる北浜健介八段だから簡単にはいかないだろう。

 そして最終戦には田村-飯島戦が組まれている。どちらかは必ず降級、下手をしたら両方が落ちるかもしれない過酷な勝負である。

キャリアをデザイン……とは

 だいたいの結果が出たあとに雑談になり、金井さんの出身大学の話になった。

「私は法政大学のキャリアデザイン学部でした」
「キャリー?」
「キャリアをデザインする学部です」
「キャリアをデザイン……。紅ちゃん?」
「ははは、なるほど。たしかにキャリアデザインですねぇ」

2018年度末に女流棋士を現役引退した竹俣紅さん。現在、早稲田大学在学中でフジテレビのアナウンサーに内定したと報じられた ©文藝春秋

 ちょうど竹俣紅さんが、フジテレビのアナウンサーに内定したという報道が出たばかりだったのだ。女流棋士でありながら早稲田大学に通い、タレントとしてテレビに出演していた竹俣さん。将棋界を離れ、今後はどういう道に行くかと注目されるなかでの、驚きのニュースだった。

 ネット上では様々な反応が見られた。私としては最新の振り飛車に古風な竹槍みたいな急戦で挑む姿を好ましく見ていたので、そういった気持ちを忘れずに頑張ってほしいと思っている。