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藤井聡太七段との対局に向けて 47歳おじさん棋士は「今までにないほど勉強している」

今期好調、高野秀行六段インタビュー

2020/02/03

 将棋の順位戦C級1組が佳境を迎えている。

 2月4日火曜日に第9回戦が予定されており、現在8連勝中の藤井聡太七段(17)が勝利すれば、B級2組への昇級が確定する。

 この注目の対局の対戦相手は高野秀行六段。

 1972年神奈川県生まれの47歳。中原誠十六世名人の門下で、C級1組での12期目を戦う棋士である。

1998年に四段(プロ)デビューした高野秀行六段 ©文藝春秋

 各メディアでも大きく報じられる藤井七段との対局を、対戦相手は、どのような心境で迎えるのだろうか――。このインタビューでは、高野六段にこれまでの順位戦と、藤井聡太戦を前にした現在の心境などをお聞きした。

私にとってC級1組は「家賃が高い」

 はじめに「ここまでの順位戦を振り返ってもらえますか?」と話を向けると、高野六段はその前に避けては通れない話題として、前期の成績の話から始めた。

高野 本当は前期で落ちていたはずなんですよ。前期の降級点を持った状態での3勝7敗というのは、普通は降級です。去年3勝4敗で年を越したんですが、そこから3連敗。相手も強かったです。阿部健治郎七段、金井恒太六段、宮田敦史七段、どれも将棋にならなかった。もともと私にとってC級1組は「家賃が高い」ところなんです。

――家賃が高い?

高野 昔から順位戦のクラスと、その人の棋力の関係を「家賃」ということばで表現することがあります。例えば、私はC級1組12期目になるんですが、今期まで勝ち越したことが1回しかない。明らかに家賃が高いんです。ただ、C級2組には10年いましたが、こちらでは負け越したことが一度もなかった。

©文藝春秋

――つまりC級2組の家賃が合っていたと。

高野 そう。だから家賃が高いC級1組では、恥ずかしながら、いつも残るための戦いを意識せざるを得なかったんです。4勝したらだいたい残れるんですが、3勝してからが長い。そこから蜘蛛の糸を掴むような感覚ですね。3勝で年を越すのと、4勝して年を越すのとでは、気持ちがだいぶ違うんですよ。

成績順に見ていくと上から6番目

 C級1組では、成績下位の棋士7人に降級点が付き、降級点を2度取るとC級2組に落ちる。そして勝ち越しか、2年連続で指し分け(5勝5敗)の成績を上げれば、この降級点を消すことができる。

――ただ「家賃が高い」とおっしゃるC級1組で現在6勝2敗として、降級点を消すことができました。この成績は、ご自身でどう思われていますか?

高野 成績順に上から見ていくと、藤井聡太、佐々木勇気、及川拓馬、石井健太郎、都成竜馬、それで私でしょ。あり得ない。ちょっとおかしい(笑)。

――それくらい意外だと(笑)。

高野 奇跡ですよね。