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ホリエモン“公約本”の「ピルで女性の働き方改革」 大ブーイングを浴びた2つの理由

「東京改造計画」を実際に読んでみた

2020/06/12
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実際に「東京改造計画」を読んでみると……

 そこで、堀江さんの主張を正確に知るために、YouTubeを視聴し書籍を読んでみました。それによると、堀江さんは縁のある産婦人科医師から、低用量ピルにより確実な避妊だけでなく、生理痛や生理前の不調(PMS)を軽減したり、子宮内膜症の治療や卵巣がんの予防ができることを知り、「みんなタブー視して言わないが、月々の生理が女性による社会改革を遅らせている」「フェミニストにもアンチフェミニストにもバッシングされるかもしれないが」と前置きした上で「ピルの公費助成」を提言されています。

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 つまり、「低用量ピルで女性の働き方改革」とは「ピルの公費助成」とのことのようです。女性ヘルスケアを担う産婦人科医としては、堀江さんの提言を良く読むと批判には当たらないと思います。

 それでは、今回の炎上はなぜ起こったのでしょうか。おそらく原因は2つ考えられます。1つは、「自分の意志と関係なく、労働生産性のためにお上にピルを内服させられる」と受け取った方が多かったからだと思います。

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日本で知られていない「リプロダクティブヘルス」

 無料でアクセスできるSNSやYouTubeだけでは、低用量ピルが女性にとって良いものだという堀江さんの考えは分かりますが、どのように東京を「改造」するのか、具体的な政策は述べられていません。ですので、「押しつけられる」と考え、反発した人が多かったかと思います。実はこの感覚はとても大事な点だと考えます。

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 日本ではあまり浸透していませんが、「リプロダクティブヘルス/ライツ」という概念があります。日本語訳は「性と生殖に関する健康と権利」で、性や子供を産むことに関わるすべてにおいての精神的、身体的な健康と、自分の体に関することを自分で決められる権利です。全ての個人とカップルが、

・子供を産むか産まないか、いつ何人産むかを自分自身で決めること
・安心して妊娠出産ができ、子供にとって最適な養育ができること
・他人の権利を尊重しつつ安全で満足な性生活を持てること
・性暴力を受けないこと
・セクシャリティ表現の自由
・バースコントロール(避妊)や性感染症の診断・治療にアクセスできること

 などが含まれます。