東京都知事選への出馬が取りざたされる堀江貴文さんの新著「東京改造計画」中に「低用量ピルで女性の働き方改革」という提言があったことで、ネットユーザーの女性たちを中心に物議を醸しています。

 SNSで話題が広がった時点では書籍は発売されておらず、発表されていたのは37の提言のみ。しかし、当然ながら「低用量ピルで女性の働き方改革」という文面から「労働生産性のために薬を飲まされる」という印象を持った方が多く、「副作用もある薬を押し付けるとは」「ピルはいい薬だけど、飲んで黙々と働けというのはモヤモヤする」などの意見が見られました。

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啓発する立場だからこそ感じたモヤモヤ

 私はこの炎上を複雑な気持ちで見ていました。私は働く女性が多い街、丸の内のレディースクリニックで診療をしています。患者さん一人一人の診察だけでなく、周辺の企業に出向いて月経周期や女性ホルモンに振り回されずに自分らしく働く方法について、管理職や女性社員の方々を対象に講演したり、法人向けの医療相談サービス事業も行っています。

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 講演では、日本医療政策機構による「働く女性の健康増進に関する調査2018」の「婦人科系疾患を抱える働く女性の年間の医療費支出と生産性損失を合計すると、少なくとも6.37兆円にのぼる。(医療費1.42兆円、生産性損失4.95兆円)https://hgpi.org/lecture/475.html」という試算を紹介しています(女性特有の不調をお金に置き換えることに抵抗がある方もいると思いますが、当事者じゃない人に問題意識を持ってもらうには、お金という共通言語に換算する必要があることももちろんご説明します)。

 現代の先進国の女性は子供を産む数が減ったことで生涯の月経回数が急増し、生理痛やPMS(月経前症候群)に悩まされるようになったこと、これは低用量ピルをはじめとしたホルモン治療で軽減することをお話ししています。

「東京改造計画」(幻冬舎)

 女性の健康は今や個人だけの問題じゃない、企業や社会が取り組むべき課題であるということを常々講演で啓発していて、これはまさに堀江さんの「低用量ピルで働き方改革」と同じ文脈なのです。しかし、私は今まで堀江さんが受けているような批判はあまり受けて来ませんでした。