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2020/06/12

「主人が反対しているのでピルが飲めない」と語る女性

 これらは当たり前のことだと思える方が多いかと思いますが、現在の日本でも、家族や婚家に(もしかしたら医療機関に)妊娠出産を強要・禁止される人や、低用量ピルやIUSの使用を「主人が反対しているので」という理由で断念する人は珍しくないのです。結婚したら子供を産まないといけない、という固定観念を持っている人もまだまだ多いでしょう。

 日本産科婦人科学会ではリプロダクティブヘルスを浸透させるための委員会を設置し、私もその末席に参加していますが、学会員を対象とした調査によればリプロダクティブヘルス/ライツの認知率は高く、もっと一般向けに啓発すべきとの意見が多数でした。さらに、そのために最も必要なことは何かという設問に対し、性教育という回答が一番多いという結果でした。自分の性や生殖に関することは自分で決定する、という当たり前の認識がもっと広まるべきと専門家も考えているのです。

 ですから、都知事に立候補しようかという人に「低用量ピルで働き方改革」と言われたら、リプロダクティブライツを侵害されるのではと身構えるのは、あるべき反応なのではないかと思います。

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毎月生理が来ることは本当に自然なのか?

 反発が起こったもう1つの原因は、低用量ピルという「薬」に対する抵抗感ではないでしょうか。ホルモン剤で排卵や月経という「自然な状態」を人工的にコントロールすることに忌避感を感じる人はまだまだ多いと思います。

 女性の体や健康について、学校を卒業した後に正確な知識を学んだりアップデートする機会はなかなか得られませんし、雑誌やインターネット上に溢れている情報は玉石混交。ですので、「薬さえ飲まなければ自然で健康」と思って暮らしている方がたが多いのは仕方のないことだと思います。

 実は、低用量ピルをはじめとしたホルモン療法は医師の間でも正確に理解が得られているとはまだまだ言えないくらいなのです。(ピルを飲んでいる方が他科の医師にやめるように言われるということはよくあります)

 毎月生理が来ることは女性にとって宿命かつ健康の証であると刷り込まれ、生理痛や過多月経、生理前の不調を「こんなものかな」となんとかやり過ごしている方はとても多いと思いますが、実はたった約100年前まで、女性と月経の付き合いは大きく異なるものでした。この約100年で人類が生涯に産む子供の人数が減った上に、栄養状態が良くなって初潮が早まったことで、昔は生涯で約150回だった月経回数が約450回になったと言われています。