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現代の「魔女狩り」? 発達障害の専門家がばらまく「不安」と「ウソ」

『発達障害のウソ――専門家、製薬会社、マスコミの罪を問う』より #2

2020/07/31
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勇気をもって不正に切り込む

 批判だけなら誰でもできると言われます。否定ばかりするのは無責任でお気楽だという声もあります。しかし、建設的な議論をストップするために何でも反対するということと、おかしなことに対して「おかしい」と声を上げることはまったく違います。不正に対して誰もが目を背けている領域に最初に切り込むには勇気が必要です。それは決して誰でもできることではありません。

 精神科における人権侵害や不正、犯罪行為に対して声を上げると、必ず「じゃあどうすればいいんだ?」「代替案を示せ」「お前がやってみろ」などと文句の声が出てきます。しかし、不正に手を染めている人に対してするべきことは、単に不正を止めさせるだけです。

 会社が一部の幹部の横領によって経営危機を迎えていたとします。その際にやるべきことは何でしょうか。まずはその不正の実態を明らかにし、関係した人を排除することでしょう。そのステップを踏まずに、同じ体制のままで経営の黒字化を議論しても何にもなりません。不正を排除してから初めて健全な議論ができるのです。

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「発達障害は一生治らない」はウソ

 これは発達障害領域でも同様です。不正とまではいかなくても、ウソや誤解が蔓延することで健全な議論を阻害しているのであれば、まずはそこを排除する必要があります。少し前まで、発達障害は先天的な脳の障害なので治ったり改善したりするようなものではないというのはその界隈での常識でした。知的障害を伴う重度な自閉症ならともかく、軽度のADHDやASDまでもそのようにみなされ、「改善する」「治る」などとうたうものは徹底的に攻撃されて排除されました。

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 ところが、disorderの概念はそもそも一生治らない障害という意味ではなく、正常な状態から外れた変調という意味です。それに、現在の精神医学の診断手法であれば、脳に先天的な障害を抱える人をピンポイントで特定することなどできず、診断自体があくまでも仮のものに過ぎないという技術的な限界を考慮すると、診断された人を一生治らない、改善しないとみなすこと自体がおかしいことになります。