「僕は発達障害を凸凹と読んでいるんです」
こんなセリフが印象的な医療マンガ『リエゾン ―こどものこころ診療所―』。「生きづらさ」を抱える人が少なくない現在社会を舞台にした児童精神科医の物語だ。
日本で発達障害と診断されている人はおよそ48万人と言われており、子どもの10人に1人、クラスで2~3人は何かしらの障害を抱えている可能性が高いという。
臨床現場ではいま何が起きているのか。同作の取材協力を務めた、子供の発達障害の権威・杉山登志郎氏に聞いた。
(「モーニング」2020年14号初出)
新患は数ヵ月待ちの状態
本作で取り上げられる児童精神科医(以下、児精医)は今日、非常に多忙で、さらに専門性がとても高い診療領域です。
たとえば、発達障害にいたっては、今や子供の1割が抱えているともいわれていますが、臨床の現場では、児精医の対象は全児童の15~20%に達しているというのが実感です。
しかし、トレーニングを受けた児精医は、全国で500人程度しかいません。都会では児精医はそれなりにいますが、児童人口も多いので、対象となる患者も多く、新患は数ヵ月待ちを作っています。地方では、そもそも定期的に通える範囲に児精医が一人もいなかったりします。
また、私は虐待を受けた子どもたちの心のケアも続けていますが、児童虐待がある家庭では、子どもだけを治療して、親元に帰しても意味がない。子供と親を治療する場がもっと必要です。だからこそ、本作――漫画での啓発が望まれるのです。