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大逆転優勝のために…元ベイスターズ捕手・西森将司が考える「流れをつかむ方法」

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/09/16
note

曖昧な考え方では勝てる捕手にはなれない

 この上記1と2を象徴した試合が冒頭の9月8日の阪神戦、7点差を追いついた試合でした。

 佐野選手が3ランを打ち3点差、一気に流れがベイスターズに傾きましたが、キャッチャー目線ではあそこでつながれて、複数のランナーを背負い、常にストレスを感じながら試合を進めるよりも、ホームランの方が良い意味で切り替えられる。「流れ」を考えると、あそこまでは別に良かったのです。

 あの時捕手がもっと時間を使って動揺するガルシア投手に冷静さを取り戻させることができたら、マウンドに行き通訳を呼んで状況を整理させ、まずはアウトを取ることに集中することを伝えていたら、もしかしたら結果は変わっていたのかもしれません。

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 それだけ次の宮崎選手にもう一度チャンスメイクをされるのだけは絶対に避けなければならなかったのです。

 実際のところこういった作業をしていても、打たれるときもあれば、こんな事をしなくても抑えることもあります。

 重要なのは、打たれる確率を1%でも下げる方法があるならば、労を惜しんではいけないということです。

 最大限努力した結果、打たれてしまうのは仕方がありませんが、「大丈夫だろう」とか「~だと思った」みたいな曖昧な考え方では勝てる捕手にはなれませんし、勝てる試合も落としてしまう結果になってしまいます。

 宮崎選手を仮に抑えていたとしたら、恐らく同点にはならなかったでしょう。

 ホームランを打った佐野選手に目が行きがちですが、止まる可能性があった「流れ」を更に大波として変化させ後続につないだ宮崎選手。

 それに続いた倉本選手。そして本当は自分が返したいと野球選手なら誰もが思う場面で、追い込まれながらも進塁打を打った戸柱選手。

 代打でタイムリーを打った中井選手。

 同点打を放った大和選手。

 下位に向かう打線の中で、チーム一丸となって同点に追いついたこの5人の活躍も忘れてはなりません。

 ベイスターズは勢いに乗せると非常に恐ろしいチームだなと改めて感じました。

 首位とのゲーム差はまだまだあり、9月13日の時点で自力優勝は消滅しましたが、今永選手や平良選手が復帰すればチームにも良い「流れ」ができ、大逆転優勝を期待しているファンは私も含めて多いのではないでしょうか。

 個人的には、平良選手の復帰を誰よりも望んでおります。

 今はテレビでプロ野球を観ることが多いと思いますが、こういった細かなところを実際に見つけてみてください。違った角度で野球を観戦できるので、観るだけで勉強になりますし、なによりも野球がもっと好きになるのは間違いありません。

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