2020年9月8日、横浜スタジアムで行われた阪神戦。7-0で迎えた6回裏、佐野選手が放った3ランで7点差が3点差まで縮まり、一気に流れがベイスターズに傾きました。しかしあの場面、元キャッチャーの僕はこう思ったのです。「むしろ阪神バッテリーは(ホームランで)よかったと思っているのでは」と。
野球をテレビで観たことがある方なら、よく解説者の方が「流れが傾いてきましたね」とか「ちょっと流れが悪いですねぇ」みたいな事を話すのを耳にした事があると思います。
球場で野球を観戦したことがある方でも、投手のテンポが悪い時や、好プレーが出た時など何か雰囲気の良し悪しを肌で感じ取っている方もいるのではないでしょうか。
イメージしてみてください、7回ノーアウト満塁の大ピンチで登板した投手が3者連続三振を取った次の回の攻撃が1番からの好打順なら、自然と点が入りそうな気がしませんか?
これが、「流れ」というものです。
ここまでは、言ってみれば誰でもわかるような事なので、ここからはプロ野球選手が実践しているテクニックなどを紹介していきます。
試合の「流れ」を支配するために必要なこと
「流れ」というものはそもそも目に見えるはずもなく、どこか漠然としていますが、実は試合を進めていくうえで非常に重要で、「流れ」を支配したチームが勝利を手にすると言っても過言ではありません。
では、「流れ」を引き寄せる、または悪い「流れ」を断ち切るにはどうすれば良いか。
1、先発投手のテンポ
投球の間隔をベストピッチができるギリギリまで早くし、尚且つストライクが先行し、3球以内に決着をつけるのが理想です。
テンポが速くてもボール先行ではあまり意味がありません。
捕手がサインを出すタイミングも早くすることで相乗効果が得られます。
その際注意しなければいけないのが、テンポが速い投手のデメリットとして、打たれだすと止まらないという点があるのが要注意。
捕手経験がある方は分かるかもしれませんが、どんな配球をしてもどんなに良いボールを投げても、連打が止まらないときがあります。
打ち取った打球でもポテンヒットになったり、内野安打になったりなど、そういった場合はどうしようもないですが、プロ野球の捕手が実践しているテクニックとして、「配球しない」というのがあります。
「配球しない」というのはどういう事か、例えば一人の打者に対して同じボールを同じコースに投げ続ける。インコースのストレート系が特に有効だと思います。カーブのような遅いボールも有効です。
この時の意図としては、打者もどんどん振ってくるのを逆手に取り、打ち損じを狙います。長打を食らうリスクもありますが、それでもこのケースでは有効です。
流れに敏感な嗅覚を持っている捕手なら、こういった作業によって打たれる前に手を打っている選手もいます。
2、タイムの使い方
プロ野球のルールでは、捕手がタイムを取り単独でマウンドに行ける回数は1試合につき3回です。(ピッチングコーチが一緒の場合はノーカウント)
この3回をどういった場面で使うかは実は非常に重要で、主に状況の整理をして投手にどういった攻めをするのかを伝えに行くことが多いですが、悪い流れを断ち切る際にも使います。目的は間を取りたいだけなので話す内容は何でもいいと思います。
私の場合は、間を取りにきた事を先に伝え、持っている球種の中で一番感覚が良いのは何か聞く場合や、ランナーが二塁にいる際は内野手を呼んでカウントが不利になったら、必殺の牽制を要求したり、もちろん弱気になっている投手に活をいれることもあります。
考え方としては、打者からアウトをとろうが、牽制でアウトをとろうが、一つのアウトには変わりはないという事です。