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理不尽な罵倒、プライベートでも…過激女芸人モリマン・モリ夫が「東京のテレビは無理だな」と悟ったワケ

理不尽な罵倒、プライベートでも…過激女芸人モリマン・モリ夫が「東京のテレビは無理だな」と悟ったワケ

モリマン ホルスタイン・モリ夫さんインタビュー#2

2020/11/15
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 私の対面に座って「髪切ったんか」「はい」「帽子取ってみ」「はい」「なんで坊主やねん」……で、今の話をしたら、すごい力でテーブルを私に向かって押し付けてきたんですよ。「髪形で笑い取れると思うなよ」って凄みながら。 

——え、え?? 

モリ夫 だから、理由言ったじゃないですか。しかも、この時代誰が坊主で笑うのよ……。日常茶飯事でしたよ、そんなの。意味分かんない。 

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——山田邦子さんもカツラで髪がボロボロになって坊主にしたとおっしゃってましたけど、モリ夫さんもそんなことが。理不尽な目に遭うことも多かったりして、いっそ男だったらもっと楽だったのに、と思ったりしませんでしたか。 

モリ夫 うーん……でも、私が男だったら売れなかったと思うんですよ。女でああいうことをやったから売れたと思うんですよね。

 当時なんてチンコ出す芸人いっぱい居たんで。出しゃいいみたいなライブ。チンコだらけのライブ。 

 

——困ったら出すみたいな。 

モリ夫 はい。今じゃできないライブ。あれはちょっと面白かったですけどね。 

 あと、私がやられやすいんですよね。向こうはもしかしたらいじってるつもりぐらいの感覚かもしれないけど、それに対してのリアクションを私はちゃんと取るから。

 そこを楽しんでいたような気がします、今思えば。普通に不貞腐れたり泣いたりする子は相手にしないじゃないですか。面白くない、見ててつらいだけだから。だから、泣いてやればよかったんですけどね。私、泣くのだけは絶対嫌だと思っていたので。 

90年代は「なんでもあり」だったけど、お金は……

——この特集の初回にご登場いただいた山田邦子さんのお話を聞くと、少々辛いことがあっても「お給料が両手に紙袋いっぱいの札束」だったら、耐えられたんだろうなあとも思うんですよ。 

モリ夫 絶対そうですよね。心の中で「フフ……ガチャガチャ言ってるやつはいるけど、私は億万長者だから」って思いますもんね。ないですもん、そこまで。バブルがはじけた後なので。 

 

——そういう意味でも90年代のバラエティーってちょっと独特というか、結構嫌なこともやらなきゃいけないけど、そんなにお金をもらえるわけでもない。 

モリ夫 そうなんですよ。だからこそそこで耐えていた方たちは本当にすごいなと思いますよ。私は逃げ組だと思っているので。 

 パワハラとかセクハラとかモラハラとか、そんなの当たり前でしたからね。生まれてきたタイミングが悪かったのかなと思うけど、でも、あの時代だからあそこまで行けたんだなとも思う。昭和だったら私たちのネタでは出してもらえないでしょうし。今はもっとダメだし。ちょうどいい時代。

 苦しかったですけど、結果悪くはなかったなとは思ってるんです。過去のことは。