テレビも見ない、漫才もコントもわからないモリ夫に急にひらけた「東京」と「芸人」の道。追い詰められた結果の下ネタはウケにウケ、女性芸人モリマンはテレビに引っ張りだことなった。
しかしそこで待っていたのは、「成功」とは程遠い、壮絶な嫌がらせの日々。女芸人だから売れ、女芸人だからイジメられる。「尖った若手の時代」に突入した90年代バラエティーの中で、モリマンは“女神”だったのか、“スケープゴート”だったのか。 (全3回中の2回/1回目から読む)
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番組で陰毛を出した日、母親から留守電が
——北海道に帰られてから、お笑いのスタンスは変わりましたか?
モリ夫 いや、変わってるんですよ、これが。ちょっと大人になっちゃったんですよ。生き残るために丸くなってしまったんです。
——そうなんですね(笑)
モリ夫 ローカルはどぎついのを必要としませんし。情報番組でいかにいいコメントを言うかなので、すごく優しくなっちゃってるんですよ。
——もともと優しい方なんじゃないですか。
モリ夫 優しいとは思います。昔は無理してたんだなとも思いますもん。
番組で陰毛を出して、その日、携帯の電源を切ってたんですけど、電源を入れたら、母親から留守電が入ってました。私「華奈」って言うんですけど、「華奈ちゃん、見たよ。お母さん、ノイローゼになりそう」って入ってて。お母さん、ほんとやめます、そういうの、と思って。
——お母さん……。
モリ夫 かわいいんです、うちのお母さん。そこからそういうことは本当にやめようと。とにかくそれまで仕事を断るということをしなかったので、断っても別にいいかと踏ん切りがつきました。
——一番忙しい時は、どんなスケジュールでしたか?
モリ夫 そうですね。家帰ってくるのが暗いうち、シャワーだけ浴びて、何日分かの服をぶん投げて、またバババッと違う服を入れて、暗いうちにまた家を出るっていうのがずっと続いてました。
——今自分が何の仕事をやっているか分からなくなりそうですよね。
モリ夫 分からないです。今自分がどこにいるのかも分からなかった。ロケ車に乗っててカーッと寝て、目が覚めて「なんだこれ、テレビの人がいる。夢だ。いや、現実だ」みたいなこととか。
笑いが起きてるのに、先輩が「うわ、さむっ」と
——周囲から「急に売れやがって」みたいな、嫉妬は?
モリ夫 ありました。舞台上のいじめもありましたし。
——お客さんがいるところで?
モリ夫 そう。ボケて、バッと笑いが起きてるのに、権力ある先輩が「うわ、さむっ」。そう言われたら、みんな「これ笑ったらセンスないと思われる」みたいな感じで、シュッとなる。ああ、意地悪だな〜、みたいな。