でも、芸人たちが飲み会で「なんであんなやつらが売れてんだよ」って私らのことを言ってた時、極楽(とんぼ)の加藤さんが「おいっ、俺の同郷の悪口言うんじゃねえ!」って止めてくれたというのを他から聞いて、メチャクチャうれしかったんですけど。
——小樽の狂犬が!
モリ夫 狂犬が吠えてくれました(笑)。
——他の芸人さんにとっては、自分たちはくすぶっているのに、寝る間もないぐらい色んなテレビにモリマンさんは出て。そうなると「女だからだろ」とか「下ネタやるからだろ」とか、そういう攻撃をされそうですね。
モリ夫 その言われ方はしましたね。ストレスでしたね、ほんとに。
「東京のテレビは無理だな」と思った理由
——モリ夫さんが「もう東京のテレビは無理だな」と思った、一番の要因はなんですか。
モリ夫 別に「このテレビが嫌だ」とか、そういうわけではなかった。日々の忙しさと、ほんとストレスですね。お酒飲んでると、横で知らない人が「古今東西つまんない芸人、モリマン」とかやり始めるの。どこ行っても嫌な目に遭っていた。
お金さえあれば、そんなバカみたいな客のいるところに行かなくていいんでしょうけど。あの頃はすべてがうまく回ってない状態でした。
——「番組の打ち上げの席で服を取られた」というエピソードをテレビで話されているのを聞いた時、本当にちょっと目の前が真っ暗になるような感覚に襲われました。
モリ夫 そんなの日常茶飯事でしたもん。メチャクチャやられてました。それ、裸にされて、掘りごたつの中に入れられた話でしょ? 裸で、足で踏まれて。そういうひどいことをする先輩は一部でしたけど、でも、先輩の言うことは絶対っていう、そういう時代でした。
あの番組の中では「つらかったです」って感じで話しましたけど、私的には「こうやって喜んでいるなら、まあいいか」ぐらいの気持ちでした。楽ですから。「ボケろ」とか「モノマネやれ」とか無茶ぶりされて、みんなの前で「さぶっ」って言われるよりは、ここで裸で寝そべってるほうが楽だよなって。
——……。
モリ夫 しかもオゴってくれないのが腹立つんですよ、そこまでやっておいて(笑)。当時はまだ先輩が後輩にオゴるっていうルールも一般的ではなかった。私たち、基本あんまり誘われることはなかったんですけど、たまにクソみたいな先輩が誘ってきては、ただ悪口聞かされて割り勘とかね。つらかったです。
スタッフも意地悪かったんで。いい現場もあるんですけど、なんでこんな威張ってくるの?みたいな。怒られたりもしますし。そうなると、仕事が正直好きになれないです。
一番忙しかった時期に起きた事件
——スタッフもなんですね。
モリ夫 マックスで忙しかった時、それこそ美容室に行く時間もなくて、私クイックみたいなところに行ったんですよね。あの、10分で切ってくれるところ。そこで「サイドを3センチぐらい切って、トップを1センチぐらい切ってください」ってお願いして、バッと顔を上げたら、逆やられてて。ピエロみたいに、サイドが長くてトップが短くなってた。
「これ、何ですか?」「こうしろって言われたので」「いや、変だと思いません?」「変です」。どうにもならないと思って、結局「坊主にしてください」と。
いつも帽子をかぶってるので、まあ何とかなるかなって。で、楽屋の長テーブルで漫画読んでたら、社員がバーンと入ってきたんですよ。