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「周囲は『顔が優しくなった』と。でも…」過激女芸人・モリ夫の東京での“唯一の心残り”

「周囲は『顔が優しくなった』と。でも…」過激女芸人・モリ夫の東京での“唯一の心残り”

モリマン ホルスタイン・モリ夫さんインタビュー#3

2020/11/15
note

——昔に比べてだいぶやりやすくなった感じですか? 

モリ夫 さっきも話したようなあんな経験をしてきて、今、すっごくみんなが優しいんで、今やめる必要はないだろうという。 

——そうか。あの時代を耐えてきたのだから。 

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モリ夫 今でもまだあのままならやめてもいいですけど。 

——芸人であることに意味がある。 

モリ夫 何だろう。やっぱり普通じゃないことをやらせてくれるので。これ言ったら本当によくないんですけど、スナックでちゃんと話題になるんですよね、トークのネタになる。店と本業の関係がいい。まあ、一応芸人のほうを“本業”と言ってますけど。圧倒的に今少なくなってますけど(笑)。 

——それこそ今は芸人さんが俳優をやったり本を書いたり、そういう時代ですね。 

モリ夫 またそれとスナックは違うような気がするんですよね。俳優とか本って才能な感じがする。脳を使ってる感じ。経営で、しかも酒って、なんかちょっと違う気が(笑)。 

イベント「北海道酒場」で乾杯するモリ夫さん

——また店に来てモリ夫さんとお話ししたいと思わせる、才能じゃないでしょうか。 

モリ夫 才能かぁ。ザ・くだらない会話しかしてなくて、自分の面白レベルが下がっていってるのが分かりますもん。何でも笑ってくれちゃうから。スナックでウケたことをステージでしゃべったらダダスベりしてますからね。やっぱりスナックのお客さんは優しいんだな。勘違いしちゃう。 

東京時代の、唯一の心残り

——また東京に出たいなという気持ちは?  

モリ夫 もう住みたくないです。暑いの嫌いだし。ゴキブリもやだ。 

——もし今自分が東京のテレビに居たら、どういう戦い方をしていたと思いますか? 

モリ夫 変わってないと思いますよ。事務所からはいろいろ言われてたと思いますけど。MC勉強しろとか。でも結局自分は自分でしかないし、せっかくこの世界に入ったんだったらそれで勝負したいですよね。 

——それでダメだったら、それは自分の責任だと。 

モリ夫 だって、求めてくるこの人、本当にセンスあるの?っていう話に最終的にはなるんで。テレビ業界の人、バラエティーやってる人がみんなセンスあるわけじゃない。すっごいおもんないやつもいっぱいいる。そいつに言われるから腹立つんですよね。まぁ昔の話ですけど(笑)。 

 一つ後悔しているのは……私本当に黙って帰ってきちゃったんです。お世話になった先輩に「実は帰ります。お世話になりました。今後ともよろしくお願いします」というのを言わずに。ほんとあの時は頭イッちゃってたと思うんですけど。 

 

——追い詰められていたんですね。 

モリ夫 だったんでしょうね。帰ってからしばらくして母と喫茶店に行って「久々に目見れる」って言われたんですよ。「何のこと?」って聞いたら、帰ってきた時は目が怖くて見れなかったって。