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《日本シリーズ開幕》江本孟紀が激白「巨人の勝機は“セオリー無視”の盗塁采配にあり」屈辱の4タテから1年

2020/11/21
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原監督が注目するのは選手の「目力」

 原監督が実績のない選手を起用するとき、どこを見ているのか。

 それは技術ではなく「心の強さ」である。もちろん、心は目に見えるものではないから、別のところで判断する。原監督が注視するのは選手の「目力」だ。

 一軍に抜擢される選手は、当然のことながら高い技術力は兼ね備えている。だが、「ここを乗り切れば試合に勝てる」という究極の場面で、腹をくくれない選手、オドオドとして不安そうな選手に対しては、技術はあっても厳しい評価が下る。「この場面は一か八かの勝負なんだから、思い切っていくぞ!」という強いハートを持った選手を、原監督は高く評価していた。

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©文藝春秋

 だが、それでも失敗することはある。強いハートはあっても、ピンチの場面でエラーをすることはあるし、チャンスの場面で三振をしてしまう者もいる。しかし、こうした失敗に関して、原監督がとやかく言うことはまずない。

失敗自体は問題ない。大切なのは「失敗したあとの姿」

 彼が問題視するのは、「失敗したあとの姿」だ。失敗してベンチに戻ってきたとき、いかにも落ち込んでいるような選手には、次のチャンスは巡ってこないと思ったほうがいい。「クソッ、二度と同じミスはしないぞ!」と闘志を剥き出しにして、ギラギラした目をしている選手、もしくは失敗の翌日にチームの誰よりも早くグラウンドに入って練習している選手。こうした選手を原監督は評価する。

江本氏

 以前、原監督にインタビューしたときにこんなことを言っていた。

「失敗は誰にだってあるんです。もちろん私にだってある。人間である以上、失敗をしないなんてことはあり得ません。

 大切なのは『失敗した後の姿』なんです。いつまでもウジウジ落ち込んでいるようではダメ。その失敗をどうやったら取り返すことができるのか。このことを考えられる選手を、私は評価しますね」

坂本勇人の野球に取り組む姿勢

 原監督の下で最も成長したのは、坂本勇人であることに疑う余地はない。昨年、5年ぶりに全試合に出場し、右バッターとして球団最多となる40本塁打を打ち、ショートとして史上3人目のMVPを獲得した坂本だが、試合に出始めてからの数年間は、失敗の連続だった。それを補ったのが、日々の地道な練習だ。坂本は誰よりも早くグラウンドに姿を現し、守備にバッティングに、足りないところを少しずつ埋めていったからこそ、今日の姿がある。

坂本勇人 ©文藝春秋