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みのもんたは“老害”だったのか? 水道橋博士が語る「テレビの王様」の異常な姿

『藝人春秋2 ハカセより愛をこめて』より #1

2021/02/09

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 芸能, 読書

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その後のはなし

 その後も、みのもんたとボクは幾度か接点を持った。

『笑っていいとも!』の裏番組『午後は○○おもいッきりテレビ』が、2007年10月に『おもいッきりイイ!!テレビ』に模様替えすると、ボクは曜日レギュラーとして起用された。

『おもいッきりテレビ』の栄光を取り戻すべくリニューアルした同番組だったが、2009年3月いっぱいで終了。1989年4月以来、20年にわたって日テレのお昼の顔として出演し続けたみのもんたは、同時間帯から撤退を余儀なくされた。

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 一方で、2005年3月から続くTBSの朝の生番組『朝ズバッ!』は好調が続き、2010年9月からは、小林悠、加藤シルビアという超絶美人ハーフアナウンサーが新たなキャスターとして加わり、みのもんたハーレム状態の番組は、まさに我が世の春であった。

 しかしながら、2013年9月11日に次男の起こした事件を受けて、同年10月25日、みのもんたの番組降板が発表された。

©iStock.com

 以降、『朝ズバッ!』は11月25日の放送から日替りのアンカー制度が導入され、ラサール石井・大和田獏・やくみつる・桂文珍と続き、なんと、なんと、そこにボクも起用された。

 まさかボクにその鉢が回ってくるとは「意外!」の一言だった。

気が遠くなるほどの「みのもんた」のすごさ

 この番組で司会をする過酷さは、一度でも体験したら、よく分かる。

 かつて生放送中に、産卵期のウミガメのような恍惚たる表情で立ち眠りをするみのもんたの姿を、嬉々としてウォッチし、あちこちでネタにしていたボクであったが、まさにしっぺ返しのように、午前3時起床の苦行が我が身に降り掛かった。

 とにかく、前日から寝入るタイミングが分からないのだ。

 ニュースというものは24時間、際限なく続くものだから、どこを最後と割り切っていいのかが分からない。優先順位は絶えず変わっていく。

 結局、寝る暇もなく、早朝3時半に、お迎えのタクシーに乗り込み、TBSへ向かう。

 ボクは司会に近いゲストアンカー役での出演となるため、控室で鮮度満点の未知のニュースを、コーナーディレクターから盛りだくさんにブリーフィングされ、本番前からヘトヘトになった。

 みのもんたという司令塔を失った番組は、とにかく集団態勢でこの危機を乗り切ろうとしていた。多くの社員アナと論客がサブを固めてコメント仕事をつかさどる。

 そして、ようやく5時半、生放送開始!

 第一声に芸人らしく、井上貴博アナに向かってジャブを打ち込む。

「あれ……みのさんじゃないんですね?」

「……それ、乾いた笑いしか湧かないんですけど……」

 それでも怯まず、「(貴方はみのもんたの)次男じゃないですね?」と指差してボケてみたが、スタジオは冷たく静まり返った。

 こうなることは分かっていたが、こういうふうにしか始められないのが芸人の性だ。

 ボクは、この日、全コーナーに出演。文字通りの長丁場だった。

 しかも、よりによって、この日が参院での特定秘密保護法案採決日に当たったため、朝から中谷元(自民党)、松原仁(民主党)、片山虎之助(日本維新の会)、浅尾慶一郎(みんなの党)が集まり、緊急討論会もあった。